ジム・キャリー×山寺宏一の運命が交差した映画『マスク』の裏話

映画『マスク』の知られざる原作と裏話

『マスク』から生まれたスターたち

 いくらCCIがあるからと言っても、やはり基本的にはキャリーの変顔力ありきの映画だ。あの大きなプラスチックで作られた義歯も、最初は2場面くらいでしか使わない予定だったものの、キャリーがあまりにも上手く使うので、予定より多くの場面で使われている。彼が表情を大きく動かす素顔に重ねる形でアニメーションが付けられているので、本当に彼の牽引力とスター性あっての映画なのだ。ちなみに、スターといえば本作で大活躍するスタンリーの飼い犬マイロの存在も無視できない。マイロは本来、実は映画にそこまで出てこない超サブキャラの予定だったものの、演じたジャック・ラッセル・テリアのマックスがあまりにも利口で優秀だったので映画のメインキャラに昇格、しかも最終的にマスクを被るという展開が加えられたらしい。

 そしてキャメロン・ディアス。本作出演前は映画の経験が一切なく、モデルとして活躍していた彼女は本作をきっかけにブレイクし、その4年後に公開された『メリーに首ったけ』でコメディ映画のスター女優にのしあがった。キャリーとディアス、それぞれのキャリアに大きなインパクトを与えたのが、この映画『マスク』なのだ。

 もう1人、キャリアに大きな影響を受けた人物を挙げるとすれば、それはキャリーの吹き替えを担当した声優・山寺宏一だろう。奇しくも彼は1985年と、キャリーと同じタイミングでデビューを果たしている。学年も同じ年齢だ。山寺はキャリア初期にエディ・マーフィーやウィル・スミス、そして今でこそ数多くの俳優の吹き替えを担当しているが、1996年に日本テレビで放送された『マスク』でキャリーを吹き替えたことが大きなキャリア転機と言えるだろう。本作は彼の代表作になり、自身も「ジム・キャリーは同年代ということもあり、本当に好きな俳優なので、これからも演じていけたら嬉しい」と日本音声製作者連盟によるインタビューにて語っている(※)。また、映画専門チャンネル・ムービープラスの「吹替王国」でのインタビューでは「これだけは取られたくない」俳優として彼の名を挙げた。

 実際、キャリーの吹き替えといえば“山ちゃん”だ。『マスク』に関しては山寺がキャリーの声色にそっくりそのまま寄せていて、日本語も英語を発音するように話しているのでほぼ区別がつかない。それがよくわかるのが“踊る大捜査線”こと「キューバン・ビート」のシーン。あの歌だけは吹き替えがされていなく(山寺はできなくて悔しがっている)、キャリー本人の歌声が吹き替え版でも流れるようになっているのだが、あまりにも違和感がなさすぎて山寺がそのまま英語で歌っているように聞こえてしまう。

 山寺はその後もキャリーの出演作品で彼の声を担当。2022年公開の出演最新作『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』も例に漏れない。しかし、キャリーは本作のプロモーション中に休業宣言をし、俳優業自体の引退をも示唆した。2人のタッグを観られる機会は、思うよりもう少ないのかもしれない。それでも、最後まで山寺がキャリーの俳優人生に寄り添う姿を見守っていきたい。

参照
※ https://onseiren.com/koeoto/volume-01
※ https://archive.ph/gzQrG

■放送情報
『マスク』
日本テレビ系にて、9月16日(金)21:00〜22:59放送 ※5分拡大
監督:チャック・ラッセル
出演:ジム・キャリー、キャメロン・ディアス、ピーター・リーガート、ピーター・グリーン
製作:ボブ・エンゲルマン
©New Line Productions, Inc.

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