『テッパチ!』バディを失った町田啓太の喪失感 佐野勇斗の演技は辛い役こそ真骨頂を見せる
また葵に対して怒ることなく、正義感ぶった自分を「笑っちゃう」といい、自衛官を辞める決断までをも下した馬場。その理由が、自衛官という仕事の難しさが理由なのではなく、お世話になった人たちに迷惑をかけたから、どういう顔をして戻ればいいのかがわからないからというのが優しすぎる馬場らしい。
第一章の最後に八女中隊長(北村一輝)が馬場に伝えた「お前の優しさ、思いやり、これはお前の武器になる。しかし時として、あだとなることを忘れるな。今は自分を優先しろ」の言葉が、こんな形で踏みにじられるなんて。最終話を前にモヤモヤとした気分が残った。
今話では、そんな馬場を演じきった佐野勇斗の表情の豊かさを再確認した。お見合い番組で女性を前に戸惑う表情、音楽隊を目指し真剣ながらも嬉しそうに練習に打ち込む姿、傷つけられた直後でふと我に帰り誰もいないオーディション会場に足を踏み入れた時の焦った顔と虚無感。そして、自殺未遂をするまで追い込まれ、目を覚ました直後で「戻れない」と泣きじゃくる姿。視聴者をしんどいと思わせたのは、彼がこれらの表情をリアルに表現したからこそだと感じた。
佐野といえば、ドラマ『真犯人フラグ』(日本テレビ系)で演じた一星役でも、「すべての罪をかぶれ」と指示されて動くというしんどい役を好演。今回の『テッパチ!』では、国生を励ます前向きで心優しい優等生のまま終わるのかと思いきや、最後の最後に彼の強みを発揮する展開となった。話の内容としてはしんどいが、1話の中でいろんな表情を見せる佐野の役者としての真骨頂を見れたという意味では、大切な1話となったようにも思える。
一方、心配なのはバディを失った国生だ。最終話、バディを失った国生がどう乗り越えるのか、最後まで見届けたい。
■放送情報
『テッパチ!』
フジテレビ系にて、毎週水曜22:00~22:54放送
出演:町田啓太、佐野勇斗、白石麻衣、北村一輝/佐藤寛太、時任勇気、一ノ瀬颯、坂口涼太郎、池田永吉、藤岡真威人(第1部)/工藤阿須加、桐山漣、久保田悠来、結木滉星、水沢林太郎(第2部)ほか
脚本:本田隆朗、関えり香、諸橋隼人
企画:渡辺恒也、江花松樹
企画・プロデュース:栗原美和子(共同テレビ)
プロデューサー:山崎淳子(共同テレビ)
演出:石川淳一(共同テレビ)、根本和政
制作協力:共同テレビ
制作著作:フジテレビ
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