『プリズム』杉咲花×藤原季節×森山未來の迫真極まる演技 皐月が陸との関係に決着をつける

『プリズム』皐月が陸との関係に決着をつける

 融資が打ち切られ、もはや続行不可能となったリガーデンプロジェクト。それでも皐月(杉咲花)と陸(藤原季節)はできる限り庭を完成させようと、悠磨(森山未來)のつてを頼って植物の調達に向かう。

 旅。物語において、それは“解放”を意味する。日常におけるさまざまな枷から解き放たれて、自分の気持ちを見つめ直すためのもの。皐月、陸、悠磨にとってもこの旅は単なる仕事以上の意味を持っていた。

 『プリズム』(NHK総合)第8話。彼らが迷いとともに乗り込んだ車が向かうのは、人が自然に介入することで豊かな生態系が維持されている“里山”だ。そこでは悠磨がイギリスで出会ったという、ハリー夫妻が生活を営んでいる。

「自分が幸せじゃないと、ほかの誰かを幸せにはできない」

 人も植物も、あるがままの生き方、あるがままの幸せを享受するその場所で、3人の自然体の姿があぶり出されていく。悠磨の隣で見せる陸の安心しきった笑顔に心を痛める皐月。外の世界とどこか切り離された里山で、彼女は陸との関係性に決着をつける覚悟を決める。

 3人が溜まりに溜まった思いをぶつけ合う、十数分間に渡る長回しのワンシーンが放送後に反響を呼んだ。それは「あの、ちょっと教えてもらいたいことがあって」という皐月の問いかけから、静かに始まった。

 悠磨から陸、陸から悠磨への未だ残る思いを淡々と確認しながらも、皐月の声は次第に震えていく。無理やり浮かべた笑みや所在なさげな手の動きから、あくまでも冷静でいたい皐月の気持ちが伝わってきた。しかし、陸が“普通”の幸せを手に入れられるように、ここにきても必死で本音にフタをする悠磨に語りかける皐月の語気は強まる。

 傷つきたくない、傷つけたくないと全身で叫ぶ悠磨。陸もまた皐月と悠磨のそれぞれに抱く感情に整理がつかず、混乱を極める。そんな彼らに皐月が放つ「2人して時代のせいにして逃げてる」「傷なんていつか治るんだから傷つけばいい」という言葉は、これまでの背景を除けば、乱暴で無責任なものかもしれない。

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