『ちむどんどん』が描いてきた暢子の冒険旅行 重子が訴えるメッセージが心に沁みる

『ちむどんどん』重子が訴える作品のテーマ

 “どんな時でも、食べるの”。『ちむどんどん』(NHK総合)第22週「豚とニガナは海を超えて」第106話は、本作が描きたいメッセージの根幹に触れたような回だった。

 前回、せっかくホテルとの契約が決まりそうになっていたところで清恵(佐津川愛美)の元夫・涌井(田邊和也)が乱入し、その話も白紙になってしまった。賢秀(竜星涼)はそれ以上に清恵が過去に結婚していた事実を受け止めきれないのか、「俺に嘘をついて、騙していたわけ?」と清恵を責める。しかし、清恵からすれば別に賢秀と何らかの親密な関係になっていたわけではないし、そんなふうに怒られる筋合いはない。逆に、その“怒り”は賢秀が清恵に対して潜在的に抱いていた好意の表れなのではないだろうか。

 いつも通りキレて、いつも通り「出てけ!」と声を荒げる賢秀。「悪いけど、ここ私んち!」と清恵が痛快に突っ込むも、その後本当に彼女は養豚場を出ていってしまった。行方をくらませた清恵を探す父・猪野(中原丈雄)と賢秀。丸3日経っても見つからない彼女から豚の分娩に関するアドバイスの手紙が届いたことで、猪野はいよいよ東京まで探しに行こうと提案する。彼の想像通り、涌井に貢ぐために水商売をした経験のある清恵はスナックで働いていた。賢秀が彼女を迎えにいって素直になる時、二人の関係性は大きく前進するはず。

 一方、暢子(黒島結菜)はさらなる苦戦を強いられていた。信用金庫の坂田(安井順平)からは追加融資は難しいことと、二ツ橋(髙嶋政伸)にも指摘された通り、必要経費を抑えるべきだと告げられる。特に人件費や仕入れ原価について見直すべきだと言われる暢子は、料理のクオリティの担保に固執し、矢作(井之脇海)を雇い続けることにもこだわっていた。しかし、そうも言っていられない。

 悩み事が尽きないせいで、キッチンの火をつけっぱなしにして離れる暢子。そのせいでラフテは焦げ、矢作からも「材料を無駄にするやつに経営者が務まるか」と叱咤される。もう何をやってもうまくいかない。ストレスのせいか食欲も落ちてきている暢子を心配する和彦だったが、そんな二人の前に現れたのが重子(鈴木保奈美)と波子さん(円城寺あや)だった。

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