『ちむどんどん』が描いてきた暢子の冒険旅行 重子が訴えるメッセージが心に沁みる

『ちむどんどん』重子が訴える作品のテーマ

 何やら大きな荷物を持っている二人。その一つが子供にあげたいピアノのおもちゃだとわかると、重子が子供の性別を知りたがって訪ねてきたかのように思えた。しかし、本当の二人の目的は暢子だった。もう一つの包みを開けて、出てきたのはかつて暢子が重子に認めてもらうために毎日作っていたようなお弁当。具材は全て栄養満点で、妊婦の体に優しいものばかりだった。忙しくて全然食べる暇もなかった暢子のためだけに作ったのだと言う。「お腹が空かなくても食べる。できるだけ、一緒に食べてあげなさい。妻に食事を取らせるのも夫の務め」と和彦(宮沢氷魚)のことも嗜める重子は、続けて暢子に向かって言葉をかけた。

「あなたのように冒険する女の子なんて私の世界ではあり得なかった。遠い南の島から一人でやってきて、自分で船を作って広い世界に漕ぎ出すあなたが羨ましい。あなたの冒険旅行を一緒に楽しみたい、あなたの乗組員だと思っているの。あなたの冒険は、もう私たちの冒険。もちろん、晴れの日ばかりじゃない。大きな波も嵐の夜もある。失敗してもいい、立ち止まってもいい。でも、どんな時でも、食べるの。食べて休んで、前よりもっと強くなって。素敵な船長に、お母さんになってね」

 『ちむどんどん』はこれまで、毎週の週タイトルに必ず沖縄の料理名が登場し、エピソードに絡んできた。食べること、料理を作ることが大好きな女の子・暢子が主人公となって進んできたこの物語が、私たちに訴えるメッセージ。今回、重子が暢子に投げかけたこの言葉は、まさに本作そのものを象徴し、これまで暢子の冒険旅行を見守ってきた私たちの心に深く刺さる美しいものだ。詩を愛する重子だからこその、少し少女的な言葉運びはとても優しい音色となって暢子と我々の胸に沁みる。

 そして暢子は和彦の提案も受け入れ、『ちむどんどん』を一時休業する決意を固めるのであった。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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