『純愛ディソナンス』はただの“ドロドロ”作品ではない 役者陣の好演が光る“丁寧”な愛憎劇

『純愛ディソナンス』“丁寧”な愛憎劇

 しかも、俳優たちの演技も見どころが多く、主人公の正樹と冴を演じる中島裕翔と吉川愛は、このような「ドロドロ」の作品でも、決して大げさな演技にならず、少し抑えたところがあるのがいい。中島は、教師をしているときも、今の仕事に就いても、どこか諦観したような表情を持っている。前クールの『明日、私は誰かのカノジョ』(MBS/TBS)でも健闘していた吉川が、「底抜けに明るい女子高校生」とか「何かを背負いすぎた女子高校生」のどちらでもなく、記号的なキャラクターではない形で冴を演じている。そうした俳優の作るトーンも、このドラマを観る動機になっている。中島と吉川が芝居を抑えている分、比嘉愛未や佐藤隆太が「ドロドロ」の部分を引き受けている。

 冴の母親・静のキャラクターは少々、誇張されているような気もするが、毒親の歪んだ回路がしっかり見えている。賢治を演じる光石研も、抑えすぎず、大げさになりすぎずに、冷酷で、裏ではどんな悪事でも平然とやってのけそうなキャラクターを演じていて、時に見るものをぞっとさせる。彼の息子を演じる和田正人とのかけあいも見逃せない。

 『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(フジテレビ系)のような、一般的に好きになってはいけない関係性においての純愛が描かれており、『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』(フジテレビ系)のように、愛憎のうずまいた世界が垣間見えるこの作品は、観ればハマりそうな人が確実にいると思われるのに、その層にはなかなか届いていないのが残念なところである。

 第7話で冴とシェアハウスで暮らす友人たちが「誰も傷つけない恋愛ってあるのかな?」とぼそっとつぶやくセリフは、ストレートではあるが、「今」を象徴する一言であると思う。こうしたことを考えると、むしろ「ドロドロ」を押し出すよりも、「人の心情が丁寧に描かれた純愛ドラマだけど、ドロドロもしています」と前に出す要素を入れ替えればよかったのだろうか。意外にも見ごたえのあるドラマだからこそ、多くの人に届いてほしいものである。

■放送情報
木曜劇場『純愛ディソナンス』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:中島裕翔、吉川愛、比嘉愛未、髙橋優斗(HiHi Jets/ジャニーズJr.)、筧美和子、和田正人、畑芽育、藤原大祐、神保悟志、手塚とおる、眞島秀和、富田靖子、光石研、佐藤隆太ほか
脚本:玉田真也、大林利江子、倉光泰子、武井彩
演出:木村真人(共同テレビ)、土方政人(共同テレビ)、菊川誠(共同テレビ)
プロデューサー:森安彩(共同テレビ)、関本純一(共同テレビ)
編成企画:高野舞
主題歌:Hey! Say! JUMP「Fate or Destiny」
制作:フジテレビ
制作・著作:共同テレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/lovedisso_fuji/
公式Twitter:@lovedisso_fuji
公式Instagram:lovedisso_fuji

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