『ちむどんどん』桜井ユキ、田中偉登が紡いだ“昔話” 回想シーンに込められた若者への願い

『ちむどんどん』回想シーンに込められた願い

 そんな2人の物語の裏で運命に翻弄されていたのが、房子と三郎だ。横浜の鶴見で屋台の飲み屋を営んでいた房子は、酔っ払いに絡まれていたところを三郎に助け出された。この時、恋に落ちた2人の青年期を演じたのは、桜井ユキと田中偉登。今や暢子たちの頼れる年長者である房子と三郎の青さを映し出した。

 特に大きく変化しているのが、三郎の方。片岡が演じる三郎は酸いも甘いも嚙み分けた落ち着きを感じさせるが、若い頃の彼はまだ荒々しさも残している。両親が生まれた沖縄への憧れもありながら、自分は生まれも育ちも鶴見というある種のコンプレックスが彼をそうさせていたのではないかと想像させられた。

 房子の場合は今と変わらず、芯の強さや凛とした美を携えているが、その中にも恋する乙女としての表情を伺うことができた。例えば、一度は三郎が出征する際、物陰から彼と妻・多江(長野里美/和内璃乃)のやりとりを眺める房子の伏し目がちな表情に胸をぎゅっと締め付けられた人も多いはずだ。

 今の若い子たちは恵まれていると言ってしまえば簡単だが、そうではなく、どうか理不尽に負けることなく立ち向かってほしいという強い願いが本作の回想シーンには込められている。それを、視聴者が引きつけられる重厚なドラマに仕上げているのは、実力のあるキャストたちだ。第17週をもって房子たちの過去はほぼ明かされたが、今後も4人の若かりし頃の物語が語られる日を期待してしまう。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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