『ちむどんどん』三郎・房子・多江、若き男女3人の恋物語 ラフテーに込められた思いとは

『ちむどんどん』若き男女3人の恋物語

 『ちむどんどん』(NHK総合)第17週のタイトルは「あのとき食べたラフテーの」。第84話では週タイトルの由来が明らかになった。「アッラ・フォンターナ」の店内でグラスを傾ける房子(原田美枝子)と暢子(黒島結菜)。暢子はずっと気になっていた三郎(片岡鶴太郎)との因縁を房子に尋ねる。同じ頃、鶴見では和彦(宮沢氷魚)が三郎に同じ話題を切り出していた。

 戦前・戦後の鶴見を舞台に、房子と三郎のなれそめが語られる。房子(桜井ユキ)の両親はやんばるから出稼ぎに来て、房子が鶴見で生まれた。三郎の父親も沖縄から出てきて起業。そのかたわらで「沖縄出身者の父親代わり」として同郷の人たちの世話をするようにもなった。御曹司として大事に育てられた三郎(田中偉登)は父への反発から不良になり、喧嘩に明け暮れる毎日を送っていた。工場の事故と病気で両親を相次いで亡くした房子は、住み込みで働きながら自分の屋台を構える。酔っ払った愚連隊にからまれて困っていた房子を助けたのが三郎だった。

 思い合う2人の前に立ちはだかったのは家柄の壁。「相手は実業家の御曹司。釣り合うわけがない」と房子は述懐する。若い2人は周囲の反対を押し切ることができず、互いを不幸にしたくないとの思いから結ばれることを断念。三郎は多江(和内璃乃)と見合いをして結婚し、手切れ金を渡された房子は県人会を抜けて姿を消す。その後三郎は出征し、シベリア抑留を経て帰国。房子は念願の店を構えて現在に至る。

 週タイトルのラフテーは、傷だらけの三郎に房子が振る舞ったものだった。三郎の「俺はあの人を捨てた意気地なしなんだよ」と、房子の「あの人は私を憎んでいるはず」という言葉はコインの裏表のように対をなしており、いかに2人が互いを思い合っていたかわかる。「釣り合わない」「住む世界が違う」と反対する周囲の声に耳を貸したことは、長いこと後悔の念としてくすぶっていた。味の沁みたラフテーは、忘れられない記憶を象徴するものだった。

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