『空白を満たしなさい』は自分を見失いそうなときに見返したい “生きること”を描いた最終回

『空白を満たしなさい』最終回を読み解く

 『空白を満たしなさい』のラストは、徹生が璃久を抱きしめようとするシーンで幕を閉じる。その後、復生者である徹生が消滅してしまったのかは、視聴者自身がその空白を満たしていくことだ。人は誰でも相手によって違った顔、異なる自分を形成している。そして、徹生だけでなく千佳もそうだったように、心の奥底には少なからず孤独に似た暗がりがある。そのことを気づかせてくれた佐伯(阿部サダヲ)に、徹生は「暗いものを消そうとするんじゃなくて、見守っていこうと思うんです」と綴った手紙を送るのだった。

 佐伯への手紙は我々視聴者に向けた手紙でもある。「死」というテーマのもと、先逝く者と残された者の思いを描写しながら、このドラマが必死に伝えていたのは「生きること」である。

 そして、何よりもそのメッセージを放っていたのは、阿部サダヲや鈴木杏、主演の柄本佑による名演の数々。特に最終回で死を目の前にした徹生と千佳が恐怖から抱き合い涙しながらも、一瞬一瞬の積み重ねである今を生き、未来に向かっていく姿は強く胸を打つ。これから自分を見失いそうになった時に見返したい作品だ。

■作品情報
『空白を満たしなさい』【全5回】
NHK+(放送から1週間)、NHKオンデマンドで配信中
出演:柄本佑、鈴木杏、萩原聖人、渡辺いっけい、うじきつよし、藤森慎吾、ブレーク・クロフォード、風吹ジュン、阿部サダヲほか
原作: 平野啓一郎『空白を満たしなさい』
脚本:高田亮
音楽:清水靖晃
制作統括:勝田夏子(NHKエンタープライズ)、落合将(NHK)
演出:柴田岳志(NHKエンタープライズ)、黛りんたろう
写真提供=NHK

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