『パンドラの果実』S2で問われる小比類巻の行動 人類最大のタブー、クローン人間の闇

『パンドラの果実』S2で問う小比類巻の行動

 一方で最上は、クローンとして生まれた少年・ナオキ(國島誠雅)を、自らが生み出したプロメテウス・ウイルスと重ね合わせる。生まれてきてはいけなかったのではないか、存在してはいけないのではないかと、頭では分かっていても考えてしまう。たしかに、クローンは倫理的観点から生成を許されてはいない。目的によっては、命の弄びだ。しかし、ナオキは確かにこの世に生まれ、今を生きている。彼には一人の人間として生きる権利があるという小比類巻。ナオキを守りたいとするジャーナリスト・郡山(深水元基)も思いはきっと同じだ。

 ナオキ、そして他にも存在するとされるクローンが作られた目的は、現状では推測の域を出ない。きっとそこには闇がある。けれど、なんの罪もなくこの世に生み出され、外の世界を知らずに生きてきたナオキを救いたいと、ただそれだけを理由に我が身を挺す大人もいる。Season2は、派手なカーアクションやバイオレンスの描写など、インパクトのあるシーンが話題となっているが、人間、そして命を軸に描いているからこその、俳優たちの細やかな芝居も見事である。

「特上のほう、サビ抜きにしてくださいね」

 ナオキが喜ぶ顔や驚く顔を想像し、顔をほころばせる郡山の姿は、のちの展開をつらくさせた。ナオキを心配させまいと、危機的な状況でも電話越しに明るい声を作る郡山。数日前に出会ったばかりの彼を信じて指示に従い、小比類巻のもとに向かうナオキ。どうか無事でと祈りながら、ほんの1時間足らずでここまで彼らに感情移入していた自分に驚いた。

 先述したとおり、今回の黒幕であるライデングループ、バックに見え隠れする国家権力は、想像以上に難攻不落であり、闇はきわめて深い。第5話予告も雲行きは怪しく、いまだ結末は読めないが、「科学犯罪対策室は信頼できる存在」という劇中の台詞に心から同意して、次の配信日を待ちたい。

【第5話予告】『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』Season2(7月23日(土)配信スタート)

■配信情報
Huluオリジナル『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』Season2
Huluにて、毎週土曜1話ずつ独占配信中(全6話) 
出演:ディーン・フジオカ、岸井ゆきの、佐藤隆太、吉本実憂、西村和彦、本仮屋ユイカ、安藤政信、平山浩行、池内万作、弓削智久、板尾創路、石野真子、ユースケ・サンタマリア
原作:中村啓『SCIS 科学犯罪捜査班 天才科学者・最上友紀子の挑戦』(光文社文庫)
脚本:福田哲平、関久代、土井笑生
監督:羽住英一郎、長野晋也
音楽:菅野祐悟
制作:田中宏史、長澤一史
チーフプロデューサー:三上絵里子、茶ノ前香
プロデューサー:能勢荘志、尾上貴洋、古屋厚、小田切ありさ
制作協力:ロボット
制作プロダクション:日本テレビ
製作著作:HJホールディングス
(c)中村啓・光文社/HJ ホールディングス
Hulu 視聴ページ:https://www.hulu.jp/pandoras-fruit

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