『家庭教師のトラコ』様々な顔を演じ分けた圧巻の“橋本愛劇場” 本当の素顔はどれなのか?

『家庭教師のトラコ』圧巻の“橋本愛劇場”

 橋本愛が主演を務めるドラマ『家庭教師のトラコ』(日本テレビ系)が、7月20日よりスタートした。今作は『家政婦のミタ』(2011年/日本テレビ系)や『同期のサクラ』(2019年/日本テレビ系)、『35歳の少女』(2020年/日本テレビ系)などの作品で知られる脚本家・遊川和彦とプロデューサー・大平太のタッグに、『同期のサクラ』と『35歳の少女』にも出演していた橋本愛という座組み。橋本は本作で民放連ドラ初主演となる。

 『家庭教師のトラコ』は、家庭教師ではなく“家庭の教師”のドラマだ。「どんな志望校にも合格率100%」を謳う謎の家庭教師・トラコ(橋本愛)は、様々な問題を抱えた3つの家庭の依頼を受け、それぞれと対峙していく。

 第1話で中心に描かれるのは、こどもの将来のことが不安でならないワーキングママ・真希(美村里江)と、有名私立小学校への受験を控えた知恵(加藤柚凪)による中村家。6歳の知恵を相手に、トラコが教えるのは「1万円で幸せになる方法」だ。課外授業として家を飛び出しサラ金に足を踏み入れては、競馬に1万円を溶かし、さらに1万円を手にいれる方法として、トラコは知恵を人質に真希から身代金の1万円を要求する。最終的には知恵にとっての、そして中村家にとっての幸せを見出すこととなるが、幼稚園児にとってはかなり生々しい、なんとも遊川和彦らしいひねくれた型破りの脚本とも言えるだろう。

 そんなお金の使い方を通して、子供に生きていく上でとても大切なことを教える現代日本を反映したテーマにも注目だが、今作にて目を引くのは“橋本愛劇場”とも言っても過言ではないトラコの演じ分けだろう。トラコが受け持つ3つの家庭はそれぞれ母親の年代も、子供の学年も異なっている。コスプレが趣味なトラコの初登場シーンはエレベーターガールから幕開けとなるが、その後は幼稚園児の知恵にメリー・ポピンズ風のコスチュームに冷徹キャラ、小学6年生の下山高志(阿久津慶人)には熱血先生を、年頃の高校3年生・上原守(細田佳央太)には妖艶な魔性の女で接していく。さらにこのほかにも、仕事のパートナーとしてトラコの秘書を務める福田福多(中村蒼)の前でのスイッチを切った素の顔もあり、これまでで最も橋本愛の演技が堪能できるドラマとなるのは間違いない。遊川と大平は『同期のサクラ』や『35歳の少女』を通して、橋本の演技に魅了され、満を持して今作の主演に抜擢したと言うが、その真価が大いに発揮される予感がする。

 もともと家庭教師とはミステリアスな存在であるが、トラコ自身もまた多くがベールに包まれた人物だ。ラストに福田が口にするトラコにとっての“本当の狙い”と親の職業一覧もそうだが、筆者が気になったのはトラコの本当の素顔がどれなのかが観ている間に分からなくなってくることだ。劇中にはトラコが提示する3つの条件「教育方針には絶対口を出さない」「授業中は部屋を絶対覗かない」「授業の日はお宅に泊めていただきます」が出てくるが、一方でトラコが嫌いな3つの言葉も存在している。第1話ではその一つ「分かんない」をスイッチに、トラコは知恵と……いや、世の中と本気で対峙していく。キーワードは怒り。そこに『家庭教師のトラコ』を紐解く鍵が隠されている気がしている。

■放送情報
『家庭教師のトラコ』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜23:00放送
出演:橋本愛、中村蒼、美村里江、細田佳央太、板谷由夏、鈴木保奈美、加藤柚凪、阿久津慶人
脚本:遊川和彦
チーフプロデューサー:田中宏史、石尾純
プロデューサー:大平太、田上リサ(AX-ON)
演出:伊藤彰記、岩本仁志
制作協力:AX-ON
制作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/torako/ 
公式Twitter:@torako_ntv

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