橋本愛が考える、コロナ以降の表現方法 「固定概念や現状を少しずつ変えていければ」

橋本愛が考える、コロナ以降の表現方法 「固定概念や現状を少しずつ変えていければ」

 コロナ禍における映画業界の現状、そしてこれからについて考えるリアルサウンド映画部の特集企画『「コロナ以降」のカルチャー 現在地から見据える映画の未来』。第7回は、ミニシアターを中心に映画館へ足しげく通うシネフィルとしても知られる、俳優・橋本愛にインタビューを行った。Instagramでのファンとの交流や、ミニシアター・エイド基金に寄せたコメントが大きな話題を呼んだ彼女に、インスタライブをやろうと思ったきっかけ、ミニシアターへの思い、そしてコロナ禍を経て感じたことをたっぷりと語ってもらった(6月8日取材/編集部)。

「これからも1対1の交流は、自分の中の土台になっていく」

ーー緊急事態宣言が解除されてから約2週間が経ちましたが、お仕事の再開状況はいかがですか?

橋本愛(以下、橋本):対面の仕事はまだほとんどありません。ファッションのお仕事で、短時間の撮影をひとつやったぐらいです。あとは来週あたりから現場や衣装合わせなどが入ってくるという感じです。

ーー緊急事態宣言下の約2カ月間はどのように過ごされていたんでしょう?

橋本:「特に何もしていない」というのがすごくわかりやすいかもしれません(笑)。この仕事って、休みも仕事みたいなところがあるので、本当の意味でやっと休めたような感覚があって。なので、個人的な気持ちとしては、すごく開放的に過ごしていました。2年半ぐらいやっていなかった自炊をしたり、引っ越してから一度もやっていなかった部屋の整理を1カ月ぐらいかけてやったり……家の中を心地いい空間にすること、それと自分自身の生活リズムを整えることに注力していました。あとは、撮影はできずとも決まっている仕事はあったので、準備のためにリサーチやレッスンをしたりしていました。

ーー延期やキャンセルになったお仕事も多かったのではないかと思います。

橋本:そうですね。でも、延期になったものは結構ありましたが、コロナが理由で完全になくなってしまったものはありませんでした。先延ばしになっただけで、逆に準備期間が増えた、みたいな。あとはこういう取材だったり、原稿を書いたり、Instagramなどを通して何かを発信していくことはやっていました。

ーーInstagramでのインスタライブはかなり頻繁にやられていましたよね。

橋本:インスタライブに関しては、この期間中に初めてやってみたんです。今までは一切やっていなかったし、私自身SNSにものすごく疎くて。ストーリーズ機能もたぶん今年に入ってから使い始めたぐらいで(笑)。インスタライブも基本的に告知せずにやるので、最初にやったときもゲリラ的な感じで始めました。

ーー今までやってこなかったインスタライブ、いわばファンとの交流ですが、始めようと思ったのにはどういうきっかけがあったんでしょう?

橋本:今回のコロナウイルスによって、世界も自分も停止してしまったような感覚になったんです。その停止したときに、私自身は言ってしまえば経済的にも精神的にも打撃はものすごく少なく済んだんですけど、世界にはそうじゃない人がたくさんいて。もし自分のファンの方の中にそういう方がいたら、大げさに言うと、命を救えるかもしれないし、生きる活力にもなり得るんじゃないかと思って、やってみることにしました。実はいままでもそういう気持ち自体ははあったんですけど、ちょっと警戒心があって……。

ーー表舞台に立つお仕事をされているわけですから、警戒心があって当然だと思います。

橋本:そう、このお仕事って、最悪の場合生命を脅かされるようなこともあるし、私自身もそういうリスクを長年抱えて生きてきた方なので、すごく警戒心が強かったんです。もちろん、皆さんからの言葉はすごく届いていたし、愛をお返ししたいという気持ちはずっとありました。ただ、愛を返すことで生まれるリスクに立ち向かう姿勢だったり勇気だったりが、自分の中で整っていなくて。理想は、ファンの方と1対1で向き合うことだったんですけど、それがちょっと怖くて、ファンの方や世間という大きな存在に対しての私1人、みたいな向き合い方しかできていませんでした。ただ、やっぱりそれがずっとしっくりきていなかったし、文化芸術の重要性や、1人の変革が世界の変革につながるということが、自分の中でも日に日に明確化されていく中で、いままでの自分のやり方とは合わなくなったんです。例えば映画だと、撮影から皆さんにお届けできるまで1年前後はかかるものなので、そういうかたちとはまた違う、いま苦しい人をいま助けたいと思いました。そういう衝動をすぐに行動に起こせるという意味では、SNSはものすごくいいツールだなと。だから、コロナや緊急事態宣言下での自粛要請がきっかけで始めたことではあったんですけど、これからも何らかのかたちでの1対1の交流は、自分の中の土台になっていくのではないかと思っています。

ーー正直、橋本さんがインスタライブをやられるというのはけっこう意外で驚きました。

橋本:たしかにイメージと違うと言われることは現場でもよくあります。やろうと思ったもう一つの理由もそこにあるんです。

ーーというと……?

橋本:いまおっしゃっていただいたような、デビューしてからのパブリックイメージみたいなものがあるじゃないですか。“雲の上の存在”とか“女神”みたいな、そういうイメージをすごく信じてくださっている方ももちろんいる。普段の生活だったり、自分の心の中のフラットな部分を見せることで、そういう方たちへの裏切りにならないか、みたいなことも考えてしまって。最終的には、「見たい人は見る、見たくない人は見ない」という選択権さえあればいいかなという結論に落ち着いたんですけど、幻想を破壊することの罪深さは感じてしまいました。でも、いまこの時代に、芸能人(自分を芸能人とは思っていないけれど、俗称として)がすごく遠い存在というのも、もういいんじゃないかなって。この時期に、やっとそういう発想に至りました。

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