マンネリ気味だった大河ドラマに変化 吉高由里子『光る君へ』は“平安時代の週刊文春”に?

マンネリ気味だった大河ドラマに変化

 光源氏のモデルも藤原道長を筆頭に複数の貴族の姿が投影されていると言われており、小説の形を借りたゴシップ記事としての側面も大きかった。宮中に仕えながら、貴族やその妻たちの優雅な生活の中に入り込み、その内幕を記録していた紫式部は現代風に言うと、インフルエンサー兼ルポライターのような存在だったと言えよう。

 吉高由里子が新聞記者を演じた『知らなくていいコト』(日本テレビ系)や相葉雅紀がネットニュース記者を演じた『和田家の男たち』(テレビ朝日系)など、近年の大石静は、ジャーナリズムを題材にしたドラマを手掛けている。おそらく『光る君へ』も「平安時代の週刊文春」とでも言うようなジャーナリズムドラマとなるのではないかと思う。

 同時に気になるのが『源氏物語』をどのような形で取り入れるかだ。『セカンドバージン』(NHK総合)を筆頭に、不倫を軸にしたメロドラマに定評がある大石だが、稀代のプレイボーイとして知られる光源氏が、複数の女性と次々と恋愛を繰り広げる『源氏物語』は、大石がもっとも得意とする題材である。そう考えると、光源氏が主人公の『源氏物語』でも良かったと思うのだが、今回の主人公は女流作家の紫式部である。おそらくここに『光る君へ』を読み解く最大の謎があるのではないかと感じる。

 おそらく本作は、紫式部が貴族の内幕を暴く平安ルポルタージュと、光源氏を取り巻く女たちの姿を描いた『源氏物語』が劇中劇として同時進行していく「入れ子構造」の物語となるのではないかと思う。そして、そこで描かれるのは、現代にも通じる女性が抱える様々な問題だろう。

 高畑勲監督の『かぐや姫の物語』や山田尚子監督の『平家物語』など、アニメでは近年、古典を再解釈し、男社会で苦しむ女性の立場から物語を紡ぎ直すアプローチの作品が増えている。『光る君へ』も、現代女性の視点から、平安時代、紫式部、『源氏物語』を読み解き直すような大河ドラマとなるのではないかと期待している。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、2024年1月より放送予定
主演:吉高由里子
作:大石静
制作統括:内田ゆき
演出:中島由貴、佐々木善春ほか

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