マンネリ気味だった大河ドラマに変化 吉高由里子『光る君へ』は“平安時代の週刊文春”に?

マンネリ気味だった大河ドラマに変化

 2024年のNHK大河ドラマが吉高由里子主演の『光る君へ』に決定した。

 物語の舞台は平安時代中期。吉高が演じるのは「世界最古の女性文学」として知られている『源氏物語』の作者・紫式部。脚本は、大河ドラマは2006年の『功名が辻』以来2度目となる大石静。制作統括は連続テレビ小説『スカーレット』の内田ゆきが担当している。

 つまり本作は、女性が主人公の物語を女性中心のチームが手掛ける大河ドラマとなっている。何より、平安貴族の物語を大河ドラマで観られることが楽しみである。

 戦国時代と幕末を舞台にした物語ばかりが続き、マンネリ気味だった大河ドラマだが、明治末から昭和を舞台に日本でのオリンピック開催に尽力した日本人の姿を描いた2019年の宮藤官九郎脚本の『いだてん~東京オリムピック噺~』以降、変わりつつある。

 2021年には渋沢栄一を主人公に幕末から昭和初期までを描いた大森美香脚本の『青天を衝け』が作られ、今年は北条義時を主人公に、平安末から鎌倉時代にかけて描く三谷幸喜脚本の『鎌倉殿の13人』が放送されている。どちらも一般視聴者には馴染みの薄い時代だが、時代背景や登場人物の見せ方が丁寧で、高く評価されている。

 2020~21年の『麒麟がくる』のような戦国時代を舞台にした作品も、明智光秀を主人公にして帝と武士の関係を描くという面白いアプローチを試みる作品も登場している。2023年に放送される徳川家康を主人公にした『どうする家康』も、主演が松本潤、脚本が『コンフィデンスマンJP』シリーズの古沢良太ということもあって、一筋縄ではいかない作品になることは間違えないだろう。

 このような大河ドラマの近年の傾向を踏まえると『光る君へ』が作られることは、必然的な流れだとも感じる。

 貴族社会が物語の中心となるため、派手な戦闘が描けないことを懸念する声もあるが、三谷幸喜の『真田丸』や『鎌倉殿の13人』が成功しているのは戦にいたる政治的駆け引きや人間関係の機微を丁寧に紡ぎ出しているからだ。

 きらびやかな衣装を身にまとった貴族たちの優雅なやり取りの裏側で熾烈な権力闘争がおこなわれる平安時代は、大河ドラマにうってつけの題材である。何より紫式部は、とても現代的なキャラクターだ。

 紫式部と言うと『源氏物語』の名前が先に出てしまうが、もうひとつの彼女の重要な作品に『紫式部日記』がある。藤原道長の要請で宮中に入ることとなった紫式部が1008年から1010年にかけての宮中での出来事を綴ったもので、藤原道長の娘・彰子の出産や数々の儀式の記録、紫式部が清少納言や和泉式部といった同時代の女流作家に対して彼女がどう思っていたかが記録されている。当時の紫式部はジャーナリストに近い立ち位置で、『源氏物語』も純粋なフィクションというよりは、劇中で描かれる朝廷の様子や貴族たちの勢力図が実話を取り入れたリアルな物語として一部の貴族に読まれていた。

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