杉咲花が考える『プリズム』に込められた思い 「大切な人を思い浮かべるきっかけに」
タイトル「プリズム」の解釈
ーー撮影中のエピソードがあれば教えて下さい。
杉咲:季節さんと未來さんとカードゲームをしました。以前から未来さんが作品に対して深く追求されている姿を拝見していたのですが、どんな方なんだろうというある種のつかみどころのなさを感じていたんですけど、カードゲームをした時に誰よりもはしゃいで飛び回っている未来さんを見て、こんな一面もあるんだ、とすごく嬉しくなりました。
ーー第1話には皐月と陸、皐月の父親である奥寺耕太郎(吉田栄作)とそのパートナー・水川信爾(岡田義徳)の4人が一緒に食事をするシーンがあります。それぞれの心がゆっくりと溶け出していくような、第1話の重要な場面の一つだと感じました。
杉咲:あそこが吉田さんと岡田さんと初めての共演シーンでした。皐月の背中を陸が押してくれたことから、一歩踏み出すことに対して臆病になっていしまっていた皐月が信爾さんに向けて「ここにいてください」と言うんです。皐月が小さな勇気を出すシーンでもあるので、大切に演じたいなと思っていました。
ーー今後の展開や見どころについて教えてください。
杉咲:(この取材のタイミングでは)撮影も佳境で最終話を撮っています。陸や悠磨さんとの出会いでしたり、お母さん(前島梨沙子/若村麻由美)、お父さん、信爾さんとの関わりを通して、少しずつ皐月の心が開いていく、自立していく姿を大切にしたいと思っています。それから、皐月、陸、悠磨の3人が交わってゆく姿を早く観ていただきたい思いが強くあります。関わりを通して自分自身と向き合ったり、それぞれが何かを決断していく姿に注目していただけると嬉しいです。
ーー杉咲さんはこの「プリズム」というタイトルについてはどのように解釈していますか?
杉咲:私は皐月、陸、悠磨の3人が交わることで初めて見えてくるその人自身の光みたいなものを意味しているのかなと思っています。
ーー杉咲さんがこの作品を通じて伝えたい思いはありますか?
杉咲:伝えたい思いというよりは、この作品を受け取った方がなにを感じてくださるんだろうということが楽しみで、自分からこれを受け取ってほしいと提示するものはあまりないかもしれないです。制作現場においては、この物語やそれぞれの役を通して、今の社会に流れる空気感をできるだけ感じ取りながら、1シーン1シーンを撮り進めていて、今この作品を描くことの意味を探して、信じて、進んでいるといった感覚です。この作品を観た方々が自分自身や大切な人、隣に住んでいる人のことを思い浮かべるきっかけになるような作品になっていたら嬉しいです。
ーー昨年、杉咲さんがより俳優業に集中するために自身のInstagramとパーソナリティを務めていた『杉咲花のFlower TOKYO』(TOKYO FM)が終了となりました。あれから、ライフスタイルや俳優としての姿勢に変化はありましたか?
杉咲:携わった作品に対して愛情があるからこそ、補足のできる環境がある分、知ってもらいたい、分かってもらいたいという思いから、必要以上に取り組んでしまったりして。そういう意味では、思いを費やすことのできる場が限られているこの環境が自分には向いているなと思います。
■放送情報
ドラマ10『プリズム』
NHK総合にて、毎週火曜22:00〜22:45放送<全9回>
出演:杉咲花、藤原季節、森山未來ほか
作:浅野妙子
音楽:谷口尚久
制作統括:小松昌代(NHKエンタープライズ)、岡本幸江(NHK)
写真提供=NHK