『東京リベンジャーズ』『ハコヅメ』など漫画の実写化とアニメ化、アプローチの違いは?

 そのため、漫画を映像化する際には「ページをめくって読む」という読書体験を時間表現に落とし込まなければならないのだが、その際にどうしても、細かい齟齬が生まれてしまう。それでもアニメ化の場合は、止まっている画に音を付けて動かすという方向で翻訳するため齟齬は比較的少ない。対して、連続ドラマや映画の場合は、漫画の画を生身の役者や実在する風景に落とし込んでいくため、良くも悪くも原作漫画とは違う部分が生まれてしまう。

 これは『ハコヅメ』のアニメとドラマの違いに、強く現れている。

 アニメ版が原作漫画に忠実なキャラクター造形なのに対し、ドラマ版『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』(日本テレビ系)では永野芽郁、戸田恵梨香、ムロツヨシといった俳優の個性が登場人物に強く反映されているため、役割は同じでも性格やビジュアルが微妙に違うものとなっている。

 また各話の見せ方も原作漫画とは異なり、1話の中に原作の複数のエピソードが散りばめられた作りとなっている。原作漫画の流れに忠実だったアニメ版と比較するとこの違いは明らかだ。それでもドラマ版『ハコヅメ』は、原作漫画ファンからは好意的に受け止められていた。これは構成やキャラクターが多少変化しても、原作漫画の精神を作り手が大切にしていることがファンに伝わったからだ。

 オリジナルであれ原作ものであれ、筆者は作り手独自の表現が観たいので、漫画の実写化は、映像化の際に生まれる「齟齬」も含めて楽しんでいる。たとえば、堤幸彦がチーフ演出を務めた堂本剛版『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)は、漫画の表現を実写ならではの表現に翻訳することで生み出された名作で、本作が生み出した映像表現は、後のミステリードラマに大きな影響を与えている。近年では映画『賭ケグルイ』や映画『東京リベンジャーズ』を手掛けた英勉監督が、漫画の実写化だからこそできる映像を模索しており、実写化にはまだまだ無限の可能性があることを教えてくれる。

 つまり、原作漫画の「再現性」を求めるならアニメ。作り手が原作漫画をどのように「解釈」して実写の映像に「翻訳」するかを楽しむのならば、実写を観るべきだと言えるだといえるだろう。

参考

※『すべての映画はアニメになる[押井守発言集]』徳間書店

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