『コタローは1人暮らし』の根底にある鮮烈なメッセージ 釘宮理恵が孤独感を繊細に表現

『コタローは1人暮らし』の鮮烈なメッセージ

 原作が累計150万部突破を突破する大人気シリーズをアニメ化した『コタローは1人暮らし』が、3月10日よりNetflixにて配信されている。心温まる人間関係がコメディタッチに描かれているが、現代社会に蔓延っている諸問題を取り扱っていたりと、その奥深い魅力は多くの人を虜にしている。

 『コタローは1人暮らし』の原作は『ビッグコミックスペリオール』(小学館)で連載中の津村マミによる同名作。2018年には「電子コミック大賞 2018」男性部門賞を受賞するなど、根強い人気を誇っている。

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 2021年にはテレビ朝日系でドラマも放送されており、主人公の狩野進を関ジャニ∞の横山裕が演じたことでも話題となった。ドラマでは横山演じる狩野の視点でコタローとの関係性が描かれていたが、原作・アニメ版での主人公はコタロー。「アパートの清水」に203号室に引っ越してきた4歳児のコタローが、隣に住んでいる漫画家の狩野進をはじめ、いかつい見た目の田丸勇、キャバクラ嬢の秋友美月らと出会い、次第に心を通わせていく様子が10話に渡って描かれていく。

 コタローの大人びた性格と健気な態度が、次第に周りの大人の行動を変えていくのが本作の面白いところだ。第7話で美月が彼氏からDV被害にあっていることを知ったコタローは、警察に告げるよりも、本人がアパートから出ていくべきだと告げる。その発言の裏には、自分が父親を悪者にしてしまった過去から、美月には好きな人を悪者にしてほしくないというコタローなりの優しさがあった。過去の辛い経験を踏まえた上で、相手のことを第一に考えたコタローの発言は胸にくるものがある。

 作品を彩るのは個性的なキャラクターたちだ。コタローは大好きなアニメ『とのさまん』のキャラクターの言葉である殿様語(「おぬし」「わらわ」など)を話す一方で、4歳児らしからぬ視点で物事を見定める大人びた一面もある。そんなコタローを演じるのは、『銀魂』の神楽役や『呪術廻戦』西宮桃役でもお馴染みの人気声優・釘宮理恵だ。コタローを囲う大人たちにも増田俊樹、早見沙織、諏訪部順一など今をときめく豪華な顔ぶれが揃っている。

 コタロー演じる釘宮といえば、“ツンデレキャラ”の先駆者として『とらドラ』の逢坂大河や『ハヤテのごとく!』の三千院ナギなど様々なツンデレヒロインを演じてきた。しかし、ツンデレキャラにとどまらず、子供役からクールなヒロイン、悪役に至るまで、担当してきた役柄は非常に幅広い。そんな釘宮だからこそ、コタローの少年のようにアニメキャラを真似する健気な姿や、狩野や美月へ達観したアドバイスを投げかける大人びた一面がありながらも、その内面に潜む肉親から受けた虐待の影を孕んだ孤独感をも繊細に表現していた。コタローの無邪気な子どもっぽさ、大人な冷静さ、内に抱えた苦しみを全て包み込むような演技は回を追うごとに惹きつけられる。

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