『やんごとなき一族』松下洸平と土屋太鳳の最強タッグに亀裂 健太は記憶を取り戻せるのか
憎悪渦巻く深山家の様々なトラブルや試練を手と手を取り合い力を合わせて、明るく愛情いっぱい乗り越え跳ね返してきた佐都(土屋太鳳)と健太(松下洸平)。それは2人が互いにとって最強の味方であり、良き理解者であり続けられたからこそのことだったのだろう。
『やんごとなき一族』(フジテレビ系)第10話では、あろうことか健太が記憶喪失になり、最愛の人・佐都のことも生まれたばかりの娘・凛についての大切な思い出も全て失くしてしまうまさかの展開が待ち受けていた(ただ、彼らの何にも勝る強い絆に危機がもたらされるとしたら、もはやどちらか一方の記憶喪失くらいしか考えられないのもまた事実だろう)。
大学生の頃までの記憶しかなくなってしまった健太は、何だか所在ない。誰かの夫である自分も、父親である自分も、そして守るべき存在を得た無敵な自分のことも知らない健太をたちまちそこに立ち上らせるのだから松下洸平、恐るべしである。突然の記憶喪失に戸惑っているのはもちろん、自身の心に何重もガードをし、人との距離感にも慎重な様子で、健太にとってどれだけ佐都との出会いが劇的で大きなことだったのか、どれほど佐都が大事で特別な存在だったのかが改めてくっきり浮き彫りにされる。「俺、もっと強くなります。そのためには佐都がいないとダメなんです。2人じゃなきゃ戦えないんです」と義母・良恵(石野真子)に話していた健太の姿が思い起こされる。
愛娘にも出会えて、束の間幸せの絶頂にいたところからいきなり奈落の底に突き落とされた佐都だが、彼女はいつだって気高く勇敢だ。何とか健太にすがり時間稼ぎをすることだってできただろうし、もっと被害者面をすることだってできただろうが、彼女は“元の健太が好きでいてくれた自分”であり続けようとする。「どんな時でも強く、前を向いて歩いていって欲しい」という願いを込めて娘に「凛」と名付けた健太に恥じない自分であり続けようと。またそんなふうに名付けられた娘に恥じない母親であるためにも。
今まであんなに愛おしさに溢れた眼差しを一身に浴びていた中、一気によそよそしくどこか疑い深い怪訝な目線を健太から向けられた時の彼女のショックたるや、刺すように痛く計り知れないものがあるだろう。深山家の悪しきしきたりに従うように健太の口から言われてしまう日が来ようとは……。
「私はあなたの妻ではありません。今のあなたは私の知ってる健太ではありませんから。(中略)もう一緒にいられないね」と別れを切り出す佐都の姿があまりに辛い。「幸せだったよ」なんて、彼らのあの愛らしい日々が過去形で語られてしまうなんて。