『愛の不時着』『梨泰院クラス』の制作会社が日本進出 合作コンテンツで世界制覇目指す?

 経済誌フォーブスのインタビュー(※2)で、SLLのチョン・キュンムンCEOは、世界における韓国コンテンツの躍進をこう分析する。

「韓国コンテンツの強みは、独創性と自由な制作環境。刻々と変化する世界の視聴者の嗜好に合わせて作品を作ることはしない。プロデューサー陣には、『自分たちのストーリーを語り、作りたいものを作れ』と伝えている」

「制作費の効率の良さも強み。韓国内でも制作費は高騰しているが、ハリウッドと比べれば格段に廉価で高品質のコンテンツを作り続けている」

 昨年買収合意に達した米国のWiipとは、共同制作やIPの共同開発、リメイクなどについて双方のクリエイターの交流を目的にしているという。一方で、日本に設立予定の新スタジオは、グローバルOTTサービスを通じて世界におけるコンテンツ覇権を取ることが目標となるようだ。

「日本は伝統的なコンテンツ大国で潜在的なIPも多い。韓国にはグローバルOTTサービスでの成功例があるので、それを活かして日本で制作事業を行う予定。韓国と日本のクリエイティビティを統合すれば、世界に通用する優れた日本のコンテンツが作れるだろう。日本のプロダクションでグローバルOTTサービス向けの作品を作り、世界的成功を収めるのが目標」

 また、これらの動きを先導するCJ ENMとJTBC(SLLの親会社)は、Naver(LINEの親会社)との3社合弁で、韓国産OTTサービスTVINGを運営している。TVINGは6月15日より米国のOTTサービスのParamount+を追加し、ゲーム原作でスティーヴン・スピルバーグが制作総指揮を務める『HALO』、女子サッカーチームのサバイバルドラマ『イエロージャケッツ』、ジョセフ・ゴードン=レヴィットがUber創業者役を演じる『Super Pumped: The Battle For Uber(原題)』などのドラマシリーズ、『ミッション:インポッシブル』シリーズなどのライブラリーが配信されている。パラマウント社とTVINGの戦略的パートナーシップには、TVING作品の海外市場配信、7本の韓国オリジナル作品の共同制作が含まれるという。その第1弾『Yonder(英題)』は、『怪物』のシン・ハギュンと『私たちのブルース』などのハン・ジミンが主演する近未来SFサスペンス。『玆山魚譜 チャサンオボ』(2021年)、『金子文子と朴烈』(2019年)のイ・ジュンイク監督が初めて手がける配信用ドラマとなる。なお、TVINGは2022年度中に日本と台湾、2023年に北米進出を予定しているが、現在のところ進捗は確認されていない。

 日本における第4次韓流ブームを引き起こした2つのスタジオが、揃って日本進出を行う。このニュースに心を躍らせているのは韓国ドラマを楽しんでいる視聴者だけでなく、日本から世界に打って出たいと願っている俳優やクリエイターなどにも刺激を与えることだろう。

参照

※1. https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2022/4234
※2. https://www.forbes.com/sites/joanmacdonald/2022/06/17/how-sll-plans-to-expand-on-this-years-k-drama-and-film-success/?sh=2cf86a076479

■配信情報
Netflixオリジナルシリーズ『梨泰院クラス』
Netflixにて独占配信中

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