『悪女(わる)』に反映された“働く女性のリアル” 異なる世代の2人の女性Pが込めた思い

『悪女(わる)』2人の女性Pが語る裏側

 6月15日の放送で最終回を迎える『悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~』(日本テレビ系)。深見じゅんによる漫画を1992年放送の石田ひかり主演ドラマを経て30年ぶりにドラマ化。今田美桜演じる田中麻理鈴を中心に、ECモールの会社オウミで繰り広げられる社員たちの人間ドラマを描き、働くことの意味を問いかけてきた。第9話では麻理鈴の尊敬する峰岸(江口のりこ)が「女性の管理職五割計画」(通称:JK5)の推進室室長になり、いよいよ社内改革のプロジェクトが始動したものの、会社を辞める人が増え管理職を目指さない人は会社に居づらくなる峰岸の方針に、麻理鈴が反旗を翻したところで終わった。注目の最終話はどうなるのか。また、本作に込めた思いは? リアルに働く女性の立場から制作した諸田景子プロデューサー、小田玲奈プロデューサーに聞いた。(小田慶子)

峰岸さん(江口のりこ)は『ハケンの品格』の櫨山裕子Pがモチーフ

悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~

――第9話で「女性の管理職五割計画」が実行されてめでたしめでたしかと思えば、肝心の女性社員たちがついてこられない状態になってしまいました。最終話はどうなりますか?

小田玲奈(以下、小田):女性の活躍推進問題、やっぱり実際はきれいごとでは進まないですよね。視聴者の方からも「ドラマに元気をもらっているけど、現実はうまくいかない」「うちの会社にも麻理鈴がいてくれたらいいのに」という感想をいただいて、そういった現状を感じています。オウミのJK5プロジェクトもいったん暗礁に乗り上げ、「じゃあ、どう盛り返すのか」ということを描くのが最終話です。

諸田景子(以下、諸田): 政府が2020年までに女性リーダーを30%にすることを目標にしていたけれど達成できなかったように、いろんな企業も女性管理職の割合を上げようとしていますが、やはり壁がありますよね。もともと、この企画を立てたときに私が思っていたのは、前作が放送された30年前と今があまり変わっていないのではないかということ。例えば女性に育児の負担がかかりがちなのは男性の働き方が変わっていないからというのもある。そういった根幹の問題を今の私たちはどう捉えているのかということを描けたらと思いました。

悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~

――政府の掲げた目標でも女性リーダー3割なのに、このドラマでは5割と高めに設定されていたのが驚きでした。

小田:本来は割合が半々にならないと、男女平等とは言えないはず。それなのに育休産休が取れただけでもう平等だと思ってしまうような状態が、私たち女性の意識に染みついてしまっている感じがします。「うちの会社は平等ですよ」と言う人も、「では、女性の管理職はどのぐらいいますか?」と聞くと、黙ってしまいがちなんですよね。

諸田:上に行くのが全てではないけれど、管理職になって得られる権利もあるので、その割合が増えることは社会を変えていくのに大事なのかなとは思います。

小田:とにかく女性のロールモデルがまだ少ないんですよね。もちろん管理職になって出世するだけが全てではなく、子供を育てながら会社でも頑張る人や、家庭が何より大事で仕事は割り切ってやるという人がいてもいいし、ロールモデルにもバリエーションが必要なんじゃないかと……。

諸田:本当に、人それぞれの働き方が認められるようになるといいですよね。

悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~

――実際に小田さんはお子さんを育てながら管理職でもあるプロデューサーという激務をこなされていますね。

小田:以前は朝から晩まで撮影現場にいるような働き方でしたが、今は子育てのために時短のような働き方になり、子供をお迎えに行くまでの間だけでやれることをやろうとしています。

諸田:小田さんは「お迎えの時間だから」と帰って行かれるんですが、その後、夕食の支度などの家事、育児をしているわけで、どこからそのバイタリティーが出てくるんだろうと不思議です。私なんて仕事をしただけで、家に帰るとバタンキューなのにって(笑)。

小田:夕方以降、モロちゃん(諸田さん)は現場にいてくれるんだけど、私は自宅で子供と家で過ごしていて、やっぱり子供はかわいいから、つい「私の方がラクしちゃっているんじゃないか」と、ドラマの中でマミコ(桜井ユキ)が感じていたような葛藤がありました。でも、モロちゃんのように現場に長くいる人は共演者の皆さんと一緒に辛いことを乗り越えたからこその絆が出来ている。それを見たときに、どちらの立場でも仕事や育児の喜びはあるんだと気づきましたね。だから、子育て中ということで会社には優遇してもらっていますが、あまり罪悪感を抱かず、ふてぶてしくなろうと(笑)。「このふてぶてしさを皆さんに伝染させたい!」という思いをドラマに込めています。

悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~

――こうしてお話をうかがっていますと、方針がはっきりしていてタフな峰岸と小田さんのイメージが重なりますね。

小田:いやいや、実は峰岸さんは先輩の櫨山裕子プロデューサー(『金田一少年の事件簿』制作など)をモチーフにしています。いつも真っ黒い服を着ていてかっこいい人で、峰岸役の江口のりこさんも櫨山さんと組んだことがあるので「櫨山さんのイメージね」とすぐ理解してくれました。

――たしかに女性プロデューサーの先駆者である櫨山さんがモデルと聞くと、納得です。櫨山さんがたくさんのドラマを作ってこられたように、この水曜10時枠では働く女性のリアルを描いていきたいという思いがありますか。

小田:それはありますね。この枠で『家売るオンナ』『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』『悪女(わる)』のようなドラマを作っているのは、そもそも櫨山さんが作った『ハケンの品格』に心動かされて、こうなりたいと思ったことが大きいですから。『ハケンの品格』はドラマ作りのお手本として参考にした作品でもあります。

諸田:私も水曜10時枠のドラマには入社前から元気をもらっていたし、自分が観てくださる方々と同じ年代でもあるからこそ、制作したもので働く女性を元気にできればいいなと思っています。

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