『私たちのブルース』イ・ビョンホンが抱える深い傷 キム・へジャと親子関係は修復なるか
ようやくオクドンが末期の癌であると知ったドンソク。「死んでから連絡しろ」「葬式だけはしてやる」など散々言ってきたが、いつも食べているラーメンをぶちまけてしまうほど落ち着かない様子だ。見兼ねたウニやホシク、チョン・イングォン(パク・ジファン)がドンソクを呼び出すが、並べられた同情の言葉に堪らなくなったドンソクはその場を去ってしまう。もちろん本人たちはそんなつもりはない。ウニは当時のドンソクを哀れに思って涙したし、イングォンは自分と同じく後悔してほしくなかっただけ。だだ、「お前の気持ちは分かる」「よく理解している」という言葉は、時に慰労であり時に傲慢にもなり得る。
ドンソクがこれまで結婚に踏み込めずにいたのも、幸せを遠ざけてしまっていたのもオクドンのような女性であることを恐れていたから。それにドンソクは好きで「おばさん」と呼んでいたわけではない。オクドンに母親と呼ばないように言われ何度も頬を叩かれたのだ。誰がこの気持ちを共感できると言えるだろう、友人の父親の愛人と呼ばれた母親を助け出したかったドンソクの気持ちを誰も理解できるはずがない。
「やりたいようにすればいい」「やり合ってみるのも悪くないと思う」。ドンソクの複雑な思いを受け止め、背中を押したのはミン・ソナ(シン・ミナ)だった。ドンソクにとって必要なのは、全てを許して木浦に連れていく優しさではなく、自分の気持ちをぶつけることなのだ。
息子のマンスが山を乗り越えたチュニに「優しいから福が舞い込んできたのね」とオクドンが声をかけるのは、自分はチュニのようにたった一人の息子に寄り添ってやれなかったという意味にも聞こえる。そして石を積むのは、自分ではなくドンソクの幸せを願ってのことだろう。
身辺整理を始めていたオクドンは、「木浦に連れて行ってほしい」とドンソクに願い出る。再婚した父親の祭祀(チェサ・先祖を祭ること)に行くと言えば、絶対に行かないとわかっているはずなのに。荷物をまとめトイレを綺麗に掃除して自宅を経つオクドンは、二度とここには戻らないことを暗示しているようだった。最期まで母親としての姿を見せずに逝ってしまうのだろうか。
■配信情報
『私たちのブルース』
Netflixにて独占配信中
(写真はtvN公式サイトより)