『私の解放日誌』が紡ぎ出す、優しい言葉たち 最終話で描き切った自分のために生きること
チャンヒを取り巻く女性たちと彼の成長
チャンヒは景福宮近くのコンビニのオーナーになっていた。やっと憧れのソウル人になれたのに、なぜか心は晴れない。ヒョナ(チョン・ヘジン)との関係を映画の『リターン・トゥ・パラダイス』に例え、自分は死にゆく人を近くで見守りたいと答えた。その心のうちには、今まで祖父母や母をたまたまでも看取ってきた時の感情があるのではないだろうか。家の借金を支払い終え、父には再婚をさせた立派な長男であるが、自分が何をするために生きているのか、3兄妹の中で一番悶々と考えていたのはチャンヒだろう。
チャンヒを取り巻く女性たちによって、彼は成長してきたのではないだろうか。第1話で、ダサすぎることを理由に振られたチャンヒだったが、それでも自分はサンポの人間でそれを知ろうとしない彼女を責めた。チャンヒの心をある意味前向きに変えたのは、彼の同僚だった、アルム(チェ・ボヨン)の存在が大きく影響している。お金持ちであり、おしゃべりで面倒な彼女のことを受け止めるには、自分の心の器を広げなければならない。そのためにクに憧れのロールス・ロイスを借りて、日々過ごしていた。しかしそれでも、彼は何か引っかかる。8年働いた会社を辞め、父親と過ごし、自分の将来を見つめ直したりもしてみた。それなのに、ひょんなことがきっかけで、自分がすべきことが見つかる。それに気がついたチャンヒは、ワクワクするという言葉以外見つからない、そういった様子だった。
歳をとるのはあっという間 どう生きるか、ギジョンの決断
ギジョンは案の定、テフン(イ・ギウ)の姉で同級生のギョソン(チョン・スヨン)とギクシャクしていた。追い打ちをかけるように、ギジョンが妊娠していないと分かった時にテフンが「良かった」と言ったことに対して傷ついていた。
愛とは何か、同情や尊敬も愛と同じく受け入れることではないのかというギジョンに対して、テフンは「よちよち歩く子供の後ろ姿を見ると不安になります」と言った。自分と同じような辛い目にあってほしくないという、彼の優しさからの発言だったのだ。そこでやっと二人は心を開いたように見える。
少し時代を感じるくるくるパーマだったギジョンは、テフンに想いを伝えるあたりからストレートになった。一つ山を乗り越えた証だろう。さらに勢いで自分でショートヘアにした彼女の心は、もう一つの山を乗り越えようとしていたのだ。曖昧な将来への不安をぶつけることができた。彼女が自由にできるのは髪型だけだったのだ。
第1話、居酒屋でシングルファザーの愚痴を言ってしまいテフンと出会ったように、またもや大きな声で50歳になったら死ぬしかないと言ってしまったギジョンは、年上のお姉さんたちに助言される。
「30歳になればカッコ良く生きていると思ってた。でも違った」「50歳は突然やってくるの。13歳の時にちょっと昼寝をして、今目が覚めたみたい」と。この言葉から、ユリム(カン・ジュハ)が20歳になった時、ギジョンが50歳で結婚するのをただ待つのではなく、今を楽しんで生きてもいいのではないか。先への不安よりも、今を楽しく生きることが大切だと思い知らされた。
独身であることの楽しさは、自由に寝て自由に起きて、家がどんなに汚くても誰にも咎められないこと。3兄妹の父親も言ったように、結婚が全てではない。自分がいいと思った生き方をする。恋人探しに夢中になっていたギジョンには、到底考えられなかったことが、テフンとの出会いを経て分かったのだ。
『私の解放日誌』は毎回、本を読んでいるのかと思うほど、一つ一つの言葉に重みがあって、人生の糧になる話が多かったように感じる。彼ら、3兄妹の人生はこれからも続いていく。決して、完全に「解放」されることはないのが人生だ。いかに自分の人生を自分のために生きていくことが大切か、知らせてくれたドラマだった。私たち視聴者の明日は、このドラマのおかげでもっと明るくなった。
■配信情報
『私の解放日誌』(全16話)
Netflixにて配信中
脚本:パク・ヘヨン
監督:キム・ソクユン
出演者:イ・ミンギ、キム・ジウォン、ソン・ソック、イ・エルほか
(写真はJTBC公式サイトより)