EXO チャンヨルの歌唱シーンは必見 明日へ向かう勇気をくれる『ぼくの歌が聴こえたら』

音楽映画として必見『ぼくの歌が聴こえたら』

 EXOのチャンヨル初主演映画『ぼくの歌が聴こえたら』は、音楽ロードムービーだ。この作品で彼は、俳優としてはもちろんだが、癒しのハスキーボイスを持つボーカリストとしても注目された。

 才能はあるがステージ恐怖症の青年ジフン(チャンヨル)は、今は借金まみれだが、かつては栄光を手にした音楽プロデューサーのミンス(チョ・ダルファン)と出会い、地方都市を周りながら10回のバスキング(路上ライブ)を行う契約を交わす。ジフンは全身がすっぽり入る段ボール箱の中で歌いながら、旅の途中でさまざまな人と音楽の楽しさに触れて少しずつトラウマを克服していく――。

 EXOではメインラッパーとサブボーカルを担当、メンバーのセフンとEXO-SCというユニット活動も行っているチャンヨル。そのビジュアルと、ハッピーウィルスと呼ばれる明るさがクローズアップされることが多いが、本作で注目してほしいのは、ボーカリストとしてのチャンヨルだ。その魅力的な声で様々なアーティストの作品にラッパーとしてフィーチャリング参加しており、中でも大ヒット韓国ドラマ『トッケビ』のテーマ曲「Stay With Me」で幻想的な女性ボーカルとデュエットする彼の中低音の甘いラップと歌声を聴いた方も多いのではないだろうか。

『ぼくの歌が聴こえたら』メイキング映像

 本作ではシンガー役ということで歌うシーンも多いが、物語のポイントとなるシーンで彼がさまざまな洋楽をカバーしているのが見どころだ。オープニングで流れるビリー・アイリッシュの「Bad Guy」は、特に印象的。また、韓国ヒップホップシーンを代表するアーティストDynamic Duoのゲコが演じる運転代行の男が、車で夜のソウルを疾走しながら歌うビートの効いたバージョンから、駐車場の控室にいるチャンヨルのボサ~ジャズ~ロックに変化するバージョンへ切り替わる流れが秀逸だ。音楽の楽しさに目覚めるファレル・ウィリアムスの「Happy」、マライア・キャリーのカバーで知られる「Without You」や、スタンダードナンバーの「My Funny Valentine」、「What a Wonderful World」、そしてクライマックスで30名ものドラマーと奏でる圧巻のコールドプレイの「A Sky Full Of Stars」まで、名曲のオンパレード。これらの名曲とともに、仁川(インチョン)、全州(チョンジュ)、慶州(キョンジュ)、麗水(ヨス)、蔚山(ウルサン)、釜山(プサン)という韓国の地方都市の美しい風景が作品を彩っていく。

 チャンヨル自身は父親がライブカフェを経営する音楽一家に生まれ、子どものころから音楽に親しんできた人物。中学3年生のときに『仁川ペンタポート・ロック・フェスティバル』(2007年)でMUSEとL'Arc〜en〜Cielのステージを観てバンドを始めたという音楽好き。EXOの中でも音楽熱は人一倍で、早くからグループの楽曲制作に携わり、プライベートでもサウンドクラウドにカバー曲や自作曲を公開。日本の音楽にも影響を受けており、EXOの日本ツアー『EXO from. EXO Planet #1 - The Lost Planet』(2014年)ではhideの「ROCKET DIVE」をカバー。山崎まさよし「One More Time One More Chance」のカバーをSoundCloudで公開していたりする。近年はプロデュースチームStudio 519のメンバーとしても活動。劇中でもギター、ピアノ、ドラム演奏を披露し、エンディングテーマ「Break Your Box」の作詞を手掛けていることからも音楽への造詣の深さがうかがわれるだろう。

 そんなチャンヨルとタッグを組んだ音楽監督は、Brown Eyed Soul ジョンヨプの大ヒットソロ曲「Nothing Better」の作者としても知られるシンガーソングライター、Eco Bridgeことイ・ジョンミョン。彼のヒット曲「釜山に行けば」も劇中で使われているが、洋楽カバーからトロット(歌謡演歌)まで、多彩な音楽もこの作品の主役となっている。

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