『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』が私たちにくれた居場所 全ての終わりであり始まり
しかし、本作はテンションがただ上がるような“楽しい作品”というわけでもない。悲しい出来事もたくさん描かれる。特に、スネイプの本当の正体やこれまでの言動の意図が全て明かされた時、彼の「Always(永遠に)」という短くも力強いセリフに涙腺が刺激されてしまうはず。
さて、先述のネビルが劇中、ヴォルデモートや死喰い人を前にして言うこのセリフが心に残っている。
「ハリーは僕たちとともにいる。ここ(心の中)に」
『死の秘宝 PART2』を以って、ハリーたちの旅路は終幕となった。それから今日にかけて、11年も経とうとする。しかし、今でも世界中の老若男女に『ハリー・ポッター』という作品は愛されているのだ。ネビルを演じたルイスは、当時役と同じように友達が少なかったと言う。だからこそ、自身の役の成長に勇気づけられたのだ。
ベラトリックスを演じたカーターは息子のビリーとよく映画を観るが、彼が憂鬱な気分になった時の日曜日には必ず『ハリー・ポッター』を観ていたと、ドキュメンタリー『ハリー・ポッター20周年記念:リターン・トゥ・ホグワーツ』にて語っている。「彼にとって、あの作品が“セーフスペース”だった」と。本作は、役者の人生(もはや人格形成)にも、ファンの人生にも大きな影響を与え、今日においても多くの人の居場所になっている。
あのトリオにとって、撮影最終日の出来事は忘れられないだろう。実は、全ての撮影の締めくくりとなったシーンは意外にも、『死の秘宝 PART1』で魔法省に潜入した3人がそこから脱出するシーンだった。煙突飛行ネットワークで使われる暖炉に飛び込む瞬間である。現場には多くの人が駆けつけ、ラドクリフとワトソン、グリントはカメラの向こうに用意された巨大なマットに向かって飛び込んだ。まるで、別の世界に飛び込むかのように。それは彼らにとっての青春であり、家族でもある『ハリー・ポッター』という存在からの卒業の儀式でもあった。その場に居合わせた関係者は皆、彼らの成長を見届けた者たちであり、撮影が終わると拍手の中、トリオは泣きながら互いを抱きしめ合う。ワトソンはこの時のことを「3人とも途方に暮れていた」とドキュメンタリーにて語っている。しかし、その終わりは同時に、彼らの始まりも意味していた。新たな役者としての人生、アクティビストとしての人生。さまざまな道に、各々が進んでいった。でも、彼らの心に、そして私たちの心にもずっと「ハリー」は居続けるのである。
■放送情報
『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』
TBS系にて、5月28日(土)19:00〜放送
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ヘレナ・ボナム=カーター、ロビー・コルトレーン
監督:デヴィッド・イェーツ
製作:デヴィッド・ヘイマン、デヴィッド・バロン、J・K・ローリング
脚本:スティーヴ・クローブス
原作:J・K・ローリング
(c)2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. Wizarding WorldTM Publishing Rights (c)J.K. Rowling WIZARDING WORLD and all related characters and elements are trademarks of and (c)Warner Bros. Entertainment Inc.