『GO』をはじめ国内外の青春映画を都心で味わう 「新宿東口映画祭2022」注目ポイント紹介

「新宿東口映画祭2022」注目ポイント紹介

『カリガリ博士』写真提供:マツダ映画社

 本イベントでは貴重な活弁での上映が楽しめるところも魅力の一つ。特に無声アニメーション映画は「日本アニメの青春時代」と題して、1928年の作品から1935年までの貴重な日本アニメをスクリーンで観ることができるので、ぜひチェックしておきたい。ちなみに、活弁といえばかつて本映画祭の会場でもある武蔵野館で活躍した名弁士・徳川夢声のリスペクト企画も実施。復元された彼と福地悟朗の音声によって届けられる『カリガリ博士』も必見である。

『シング・ストリート 未来へのうた』(c)2015 Cosmo Films Limited. All Rights Reserved

 さて、すごいのは邦画だけじゃない! 洋画のラインナップも食べ合わせ百点満点な青春映画の代表作がズラリと並んでいて、非の打ち所がない。邦画がそれぞれアツい雰囲気の作品なのに対し、洋画系はアンニュイなインディペンデント作品が集まっているのが印象的だ。といっても、『シング・ストリート 未来へのうた』は80年代、大不況のダブリンを舞台にした「バンド、やろうぜ!」系のアツい映画。『リンダ リンダ リンダ』とあわせて観れば、帰り道に楽器店に寄ってしまうかもしれない。

『君の名前で僕を呼んで』(c)Frenesy, LaCinefacture

 しかし、『シング・ストリート』も、他のラインナップ作品である『ヴァージン・スーサイズ』や『ウォールフラワー』、『君の名前で僕を呼んで』と同じように、“フラジャイルな若者の精神”がテーマとなっている。脆く、崩れやすい。幼少期のトラウマのせいで人間関係がうまくいかない“僕”の物語である『ウォールフラワー』も、誰もが羨む美少女が「自分の存在を消したかった」と語る『ヴァージン・スーサイズ』も、「自殺」という題材をはらんでいる。そして『君の名前で僕を呼んで』は言わずもがなティモシー・シャラメの大出世作であり、誰かを愛すときの喜びと不安、そして恋が破れる時の痛みが全てのセクシュアルアイデンティティにおいて同じであることを教えてくれる、素晴らしい恋愛青春映画だ。

『七人樂隊/Septet: The Story of Hong Kong (原題) 』(c)2021 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved

 そして香港の七人の巨匠による『七人樂隊/Septet: The Story of Hong Kong (原題) 』も見逃せない。アン・ホイ、ジョニー・トー、ツイ・ハーク、サモ・ハン、ユエン・ウービン、リンゴ・ラム、パトリック・タムが集結し、それぞれの視点で香港に住む人々の生活を描いたオムニバス映画となっている。なお、2018年に死去したラム監督にとっては遺作でもある本作。10代のラブストーリーに、厳しい先生から武芸を教わる学生の話、そしてカンフーじいさんと孫娘とのリレーションシップなど、そこには様々な青春の物語がある。1950年代から未来にかけて、それぞれ映す時代をくじ引きで決めたという制作背景も面白い。日本では2020年に開催された第21回東京フィルメックスにて上映され、観客賞を受賞している作品なので、この機会にまたスクリーンで観ておきたいものだ。

 アート寄りで作家性の高い作品が目白押し。日本、香港、ダブリン、イタリア、アメリカ……様々な土地や時代を舞台にして描かれる青春映画を、新宿東口で堪能してほしい。

■公開情報
「新宿東口映画祭2022」
5月27日(金)~6月9日(木)14日間開催
会場:新宿武蔵野館(東京都新宿区新宿3-27-10 武蔵野ビル3F)、シネマカリテ(東京都新宿区新宿3-37-12 新宿NOWAビルB1F)
後援:新宿区/公益財団法人新宿未来創造財団/一般社団法人新宿観光振興協会
協力:新宿東口商店街振興組合/国立映画アーカイブ
公式サイト:https://filmfest.musashino-k.co.jp/
公式Twitter:@shinjuku_f_fest

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