『GO』をはじめ国内外の青春映画を都心で味わう 「新宿東口映画祭2022」注目ポイント紹介

「新宿東口映画祭2022」注目ポイント紹介

 5月27日から6月9日にかけて新宿武蔵野館とシネマカリテで開催される「新宿東口映画祭2022」。今年は初開催となった昨年と比べ、より幅広い作品のラインナップに目移りしてしまう。特に気になるのは、国内外から集まった粒揃いの「青春映画」だ。

 国内作品で注目したいのは、窪塚洋介×宮藤官九郎タッグ作品の上映。『GO』は、在日韓国人である高校生の主人公・杉原(窪塚洋介)が国籍をはじめとする様々な問題に対峙し、疑問を呈してまっすぐに生きていく。脚本家・宮藤の味が随所に散りばめられた「クスッ」とさせられる台詞の軽快さとクレバーさ、そして人種問題について考えさせられるテーマ。まさに今こそ、観直したい映画でもある。近年アメリカを中心に欧米では人種をテーマにした社会的な作品が多く公開され、そのムーブメントへの意識が高まっている印象だが、日本も2000年代前半は人種を扱う作品が多かった。公開当時から21年も経った今、私たちは改めて杉原に「俺は何人だ!」と問いかけられる。それに何と答えるのか。なんと窪塚本人が登壇するトークショーもあるということで、ファンは必見だ。

『リンダ リンダ リンダ』(c)2005「リンダリンダリンダ」パートナーズ

 同じく窪塚×宮藤のタッグで制作された『ピンポン』も、スポ根邦画の代名詞として挙げられる名作。こちらも台詞回しが面白く、痛快な青春映画なのであわせて観てほしい。また、『GO』と同じように韓国人学生との交流をテーマにした『リンダ リンダ リンダ』は、シスターフッドを描く名作。その後も『空気人形』など日本作品に登場するようになったペ・ドゥナは、当時日本語で演技をしたことで「映画と演技には国境がない」と確信したという。それがハリウッド進出へのきっかけになったと語っており、現在世界で活躍する彼女に翼を与えた意味でも『リンダ リンダ リンダ』は今観ると感慨深い作品だ。

『学校の階段2』(c)1996東宝

 また、『学校の階段2』(『2』というところが個人的に痺れる!)や『渚のシンドバッド』と、ジュブナイル作品もラインナップの中で光り輝いている。そこには多くの大人が膝を打ったあの『若おかみは小学生!』も名を連ねていて、もう「何を観ても当たりでは?」と思ってしまうほど。『君に届け』、『桐島、部活やめるってよ』、『アイスと雨音』と、2010年以降の青春映画も上手いバランスで選出されている。そして2000年代前半のものと、描かれる学校生活の変化、学生の佇まい、青春の光景を見比べてみるのも、映画祭ならではの楽しみ方かもしれない。

狼 LONEWOLF
『狼 LONEWOLF』(c)2022「狼LONEWOLF」製作委員会

 そんなラインナップの中で気になるのが、新作の『狼 LONEWOLF』。スタントマンだった父が事故死し、彼の死の原因を作った元スタントマンに復讐を誓う若者の物語。父と同じように、立派なスタントマンとして成長していく若者の青春映画である。しかし、何より本作はCGを一切使っていない、本物のスタントが堪能できる点でアクション好きは必見。近年、クエンティン・タランティーノ監督作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でもスタントマンの生き様が描かれ、アカデミー賞でもスタントマンの功績を讃える部門を設置することが求められるなど、注目が高まるスタントという存在。本作で、日本のスタントの可能性を刮目したいところだ。

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