『ちむどんどん』を考える3つのポイント 朝ドラ=15分も長すぎる時代に?

『ちむどんどん』を考える3つのポイント

 3つ目のポイントは、15分の短いドラマにもかかわらず内容が盛りだくさんであること。例えば第29話。暢子はレストランの就職試験を受けて合格する。その後、鶴見の下宿となる料理屋で沖縄県人会の人たちに出会って楽しく過ごすところで通常なら「つづく」になりそうなところ、賢秀が現れる。主人公・暢子の上京物語の清々しい余韻がたちまち賢秀のノイズにかっさらわれる。

 また第30話では、暢子の料理人修業のはじまり、賢秀の借金問題、良子の結婚話、歌子(上白石萌歌)の歌や淡い恋の話、さらに、子供時代の回想シーンまであって、亡くなった父・賢三の存在も再び大きくなってきて、とあっちこっちに視点が動いて慌ただしい。

 『ちむどんどん』が四人兄妹の物語として、15分を四人の物語に分割し東京と沖縄の様子も描く理由は、現代人の生活様式に合わせたものと考えられる。生活習慣の変化やコンテンツの増加に伴い一本のドラマや映画をじっくり鑑賞する暇がない人が増えるなか、朝ドラは1日15分で短いから見やすいと言われてきた。だがもはや15分ですら長い時代がやってきたようだ。お笑い番組で放送する5分くらいのコントを意識して作っているようにも感じる。

 例えば、第30話、暢子が朝、出勤し、先輩・矢作知洋(井之脇海)に厨房口から入るように注意されたとき、彼が入る前にドアを閉める。取り残される矢作。これをドラマとして観ると主人公がこんな失礼な態度をとることは観ていて愉快ではない。だが、コントだと思うと気にならなくなる。ニーニーの度重なる借金もコントの繰り返しであれば笑って観ることができる。少しでも視聴者に飽きることなく観てもらうためにエピソードを短く区切り、ひとつひとつに何かしら刺激を付与する。このなかのどれかひとつは視聴者に刺さるのではないかという作り手の模索があるように思うのだ。

※高嶋政伸の「高」はハシゴダカが正式表記。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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