『バブル』は日本アニメシーンに何をもたらすか 荒木哲郎監督の挑戦にエールを込めて

『バブル』の挑戦は何をもたらすか

 日本アニメの課題と、今後の成長戦略の1つとして海外にいかにアピールするかという問題がある。クールジャパンと呼ばれ、今や日本アニメは世界的な人気を獲得し始めていることは広く知られている。

 しかし日本アニメは、国際的に知名度の高い作品もあるものの、ほとんどの作品が国内向けとして作られてきており、海外人気はあくまでも副次的なものとして扱われてきた。それは海外に対してアピールする手段などが限られていたこともあるだろう。だが、Netflixなどの海外の配信サービスの登場により、海外に対して作品をアピールする場が増えた。

 また日本アニメの課題として、監督などのクリエイターの知名度が低いこともある。例えば『進撃の巨人』の名前は知っていても、Season 3までの監督が荒木哲郎だとすぐに答えられる人はそう多くない。それまでに作り上げた作品の知名度や実績が十分であるにもかかわらず、クリエイターの名前を周知させるのは、それだけ難しいことなのだ。

 その点において『バブル』が志した挑戦に、大きな注目をすべきではないだろうか。あえて原作知名度のないオリジナルで、監督やクリエイターの名前を前面に出して、世界に向けて勝負する。その結果、名前で観客を呼べるほど知名度が高まれば、今後の作品にも、そしてアニメ業界全体にも大きな意味を持つだろう。上記の作品のように、日本国内のみならず、世界規模でアニメファンに注目される作品を生み出してきた、荒木監督の次のステップとして挑戦すべきことだ。

 WIT STUDIOと荒木監督が主導した『バブル』の映像面における迫力は、間違いなく現在の日本でも最先端な映像表現の1つだ。Netflixの先行配信で話題性を集めて、興行収入に繋げるという新たな試みがどのような結果になるのか、注目していきたい。

■公開・配信情報
『バブル』
全国公開中
Netflixにて全世界配信中
監督:荒木哲郎
脚本:虚淵玄(ニトロプラス)
キャラクターデザイン原案:小畑健
声の出演:志尊淳、りりあ。、宮野真守、梶裕貴、畠中祐、広瀬アリス、千本木彩花、井上麻里奈、三木眞一郎、広瀬アリス
オープニングテーマ:「Bubble feat. Uta」Eve(TOY'S FACTORY)
エンディングテーマ:「じゃあね、またね。」りりあ。(VIA / TOY'S FACTORY)
制作:WIT STUDIO
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2022「バブル」製作委員会
公式サイト:bubble-movie.jp
公式Twitter:@bubblemovie_jp

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