何のために生きてるんだろう、どうせ死ぬのに 最新ホラー映画『N号棟』が問う死生観
リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、中学の卒業論文で「死後の世界について」を題材にした黒歴史クリエイターこと鈴木が『N号棟』をプッシュします。
『N号棟』
誰しもが一度は「死ぬのが怖い」と思ったことがあるだろう。死という概念を理解できるようになるのは、6〜7歳だそうだ。今回ご紹介するのは、そんな“死”が怖くなくなるかもしれない、不気味で不思議な映画だ。萩原みのり演じる主人公の史織は、死ぬのが怖くて眠れないという、“死恐怖症(タナトフォビア)”を抱えているが、新しい彼女がいる元カレを普通に誘っちゃう系の、エレガント人生のコントに出てきそうな女子大学生である。山谷花純演じる真帆も、倉悠貴演じる啓太も、思わずいるいると言いたくなってしまうようなありのままの大学生だ。そのリアルな人間関係が、続く本編の不気味な人間関係と混ざり合っていく。
本作は「考察型恐怖体験ホラーという新ジャンルを開拓する」と銘打たれている。実話を基にした映画ということもあり、最初はその“真相”を考察するものだと思っていた。しかし、真相もさながら、作中でこれでもかと突き付けられる“死”に注目してしまう。死にたくないから生きるのか、生きたいから死にたくないのか。もはや生きているのか、死んでいるのか。生きる、死ぬとは何なのか。“死生観”を考察したくなる、まさに“死”を生かした作品であった。