『今どきの若いモンは』『ヒル』……WOWOWが描く人気漫画原作ドラマのリアリティと意義

人気漫画原作ドラマのリアリティと意義

 近年は映像系配信サービスの増加によってインターネットでドラマを楽しむ傾向が増え、それに伴い各配信サイトがオリジナルドラマを制作。原作となる小説や漫画の需要が急激に高まり、こと漫画においてはウェブマンガという新たなジャンルの隆盛によって、これまでになかったテイストの漫画も増えた。

 WOWOWでは昨年末に『ビッグコミックオリジナル』で連載中の人気作を、有村架純の主演でドラマ化した『前科者 -新米保護司・阿川佳代-』を放送・配信、今年初頭に同キャストの映画版も公開され大きな話題となった。そうした潮流によって、今春は『明日、私は誰かのカノジョ』(MBS/TBS)、『正直不動産』(NHK総合)、『先生のおとりよせ』(テレビ東京系)、『花嫁未満エスケープ』(テレビ東京系)など、各局が漫画のドラマ化に注力。WOWOWでも『今どきの若いモンは』や『青野くんに触りたいから死にたい』『ヒル』など、話題の漫画を原作にしたドラマが話題となっている。

お仕事系、純愛×ホラー、クライムサスペンス 多彩なジャンルの人気漫画がドラマ化

WOWOWオリジナルドラマ 今どきの若いモンは
『WOWOWオリジナルドラマ 今どきの若いモンは』

 放送・配信中の『WOWOWオリジナルドラマ 今どきの若いモンは』は、注目の漫画家・吉谷光平による漫画が原作で、漫画アプリの「サイコミ」で連載中。漫画の第1話がTwitterで、25万いいねを超えて話題を集めている作品だ。

 強面の課長・石沢一は、「今どきの若いモンは」が口癖。新入社員・麦田歩は、怒られるのかと思いビクつくが、しかしそれに続くのは、意外な言葉の数々。石沢課長が発する言葉には、ドラマを見ているうちにいつの間にか麦田と一緒に心が救われ、思わず「課長―――!」と叫びたくなる。

 石沢を演じるのは、『GTO』(フジテレビ系)、『相棒』(テレビ朝日系)など数々のヒットドラマに出演してきた反町隆史。「上から目線や頭ごなしではなく、相手の立場を考え伝えるところを、演じるうえで気にした」と、WOWOWの公式サイトで石沢について話す。また、麦田を演じた福原遥に対しても「あれだけ“受け”がしっかりしてくれていると、僕が弾んでいられる」と太鼓判を押す。2人の絶妙なやり取りが、漫画やアニメにはないドラマであればこその面白さを生んでいる。また、石沢の部下をかばう男気や華麗にハーレーを乗り回す姿にも惚れ惚れとし、「こんなかっこいい上司に自分もいつかなりたい」と、きっと誰もが憧れるだろう。

 他にも藤井隆が演じる営業三課の課長・恵比寿や萩原聖人が演じる営業部長の風間など個性豊かな上司が登場。部下とコミュニケーションを取りたいが、“パワハラ”や“アルハラ”などと言われるのではないかと、上司なりに悩みながら部下と接している様子がユーモアたっぷり。実写ドラマだからこそのリアリティーが、原作漫画の魅力を決して損なうことなくより輝かせている作品。新入社員が奮闘するいわゆるお仕事ドラマと高をくくることなかれ。新入社員はもちろん上司にもぜひ観てほしい、世代を超えて楽しめるドラマになっている。

WOWOWオリジナルドラマ 青野くんに触りたいから死にたい
『WOWOWオリジナルドラマ 青野くんに触りたいから死にたい』

 一方、Sexy Zoneの佐藤勝利主演で話題なのが、『月刊アフタヌーン』にて2016年から連載中の原作をドラマ化した『WOWOWオリジナルドラマ 青野くんに触りたいから死にたい』だ。原作は、衝撃的なタイトルをはじめ、純愛ラブコメかと思いきや本格ホラーに展開していくという異質さがネットでも話題となり、『次にくるまんが大賞2018』や『第45回講談社漫画賞』にノミネートされた注目作。

 ひょんなことで付き合い始めた青野龍平(佐藤勝利)と刈谷優里(高橋ひかる)だったが、青野が交通事故で亡くなり優里は後追い自殺を図ろうとする。そんな優里の前に幽霊になった青野が現れ、かくして幽霊と人間による男女のお付き合いが始まった。しかし優里からの提案で優里の体に憑依したことをきっかけに、青野は次第に別人格の“黒青野”を現し始める。そんな青野を成仏させるために優里と共に奔走するのが、青野の生前の親友・藤本雅芳(神尾楓珠)と、ひきこもりでホラー映画マニアの堀江美桜(里々佳)。全く接点のなかった3人が、青野を通じて友情を育んでいく様子も描かれていく。

 触れ合いたいのに触れ合えない。幽霊と人間のもどかしい恋模様がコメディタッチで描かれ、ちょっとドキッとさせるシーンもある。そうかと思えば、思わず後ろを振り返って確認してしまうような、和ホラーテイストの怖さも。純愛とホラー/ミステリーが絶妙な割合でミックスされており、胸キュンとホラーのジェットコースターで目が離せなくなる。

 原作漫画のシンプルなタッチは、人気はありながらもアニメ化には不向きとされていた作品。しかしドラマでは原作で描き切れていないところまで細かく描写され、純愛シーンのキラキラ感やホラーシーンのおどろおどろしい表現など想像の部分が、やり過ぎない程度のちょうどいいCGで完璧に補完してくれている。これぞ漫画原作をドラマ化することの意義を感じる秀作だろう。

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