『明日』一貫して描く「簡単に死を選ぶ者はいない」姿勢 寿命を全うさせる死神の役割とは
危機管理チームは自殺を防ぐだけが仕事ではない。第6話に登場したのは、自らの手で人生の幕を閉じようとしていた91歳のヨンチョン。リョンたちの任務は、寿命までの残り1日でヨンチョンに有意義な人生だったと気づいてもらうことだ。また、部屋の清潔さが精神の安定に繋がることや話し相手がいるだけでも笑顔が戻る様子など、孤独死についても描かれている。
ヨンチョンは古紙を回収するその日暮らしの生活を送り、通りがかった人には「勉強しなかったからああなったのよ」と吐き捨てられていた。しかし本当にそうなのだろうか。その人がどうやって生きてきたのかまで見た目で決めつけられるのだろうか。朝鮮戦争に出征した国家功労者であるヨンチョンは、その証である帽子をいつも被っていた。だが、心ない言葉、彼を煙たがる人たち、社会から必要とされない現実が、国を守ったという自負心を忘れ、生きる意欲さえ奪っていったのだろう。
「あの時違う選択をしていれば…...」寿命を伝えられたヨンチョンは、自分がしてきた選択が正しかったのか後悔しているようだった。生きていればあらゆる選択をしなければならない。それがよかったかどうかは結果論にすぎないのだ。だから、「意味のある人生だった」と彼を肯定する任務がどれほど重要なのかがわかる。ヨンチョンに最大の敬意を払うために、「走馬灯」の社員を総動員する異例の対応が取られるが、それだけ一人ひとりの人生が特別なものであり称えられるに値するのだ。
ところが一人納得できずにいるジュヌンがいた。どうして真面目に頑張って生きている人が生前に苦労をして、死んでから報われなければならないのか。誰もが思っているけれど消化できない思いをジュヌンが代弁する。しかしそれは、「走馬灯」の会長(キム・ヘスク)の言う通り、世の中を公平にすることは誰にでもできないからだ。けれど、自分の人生をどう選択していくかは誰にでも同じく与えられた機会である。その中で、お互いに声をかけたり、話を聞いたり自分ができることを探して、補い合ってまた新たな選択を重ねていくのだろう。
■配信情報
『明日』
Netflixにて独占配信中
(写真はMBC公式サイトより)