満島ひかりの“もっと知りたくなる”演技力 『未来への10カウント』で届ける「ファイト!」

満島ひかり、見守られる側から見守る側へ

 木曜ドラマ『未来への10カウント』がテレビ朝日系にて4月14日よりスタートする。主人公を演じる木村拓哉とヒロイン役の満島ひかりは『月の恋人〜Moon Lovers〜』(フジテレビ系)以来12年ぶり2度目の共演となる。

 満島といえば、あの華奢な体のどこにそのエネルギーが秘められていたのかと思うほど、力強い歌声が忘れられない。彼女が歌う中島みゆきのカバー曲「ファイト!」は、体の奥底から湧き上がるパワーが体中を駆け巡り貫通するかのようであった。ハスキーな声質も相まって、その響きは唯一無二でとても魅力的だ。そして彼女にはどこか常に“文学的”な香りが付きまとい、その表現にはなぜか“懐かしさ”のようなものを思い起こさせる力がある。

 『カルテット』(TBS系)では、マイペースで自由奔放、飾らない性格のチェリスト・世吹すずめ役を好演。独特な言い回しや軽妙な掛け合いがスッとあの4人の世界観に溶け込み、心地良い馴染みを見せていた。満島演じるすずめがそこに混ざることで、より彼らの世界観にバリエーションが出て彩りが添えられていたのもおもしろい。役柄の感情が満島の体を貫き、その感情のままに突き動かされているからこそ、とにかく自然体で嘘がない。このキャラクターは普段何を考えているんだろう? どんなものが好きなのだろう?と、その役の地続きにある“生活”にまで知らぬ間に想いを馳せ、“もっと彼女を知りたい”と覗いてみたくなってしまうのだ。

 かと思いきや、映画『愚行録』での光子役では質感や重量を全く感じさせない空虚に包まれた姿を見せた。満島持ち前のあの瞳のキラキラ、燦々とした輝きはどこへやら。彼女が身の上を語り出す独白シーンは、水に垂らした一滴の墨がどんどん歪な形で広がり波及するような胸のざわつきを感じさせた。彼女のどこに矛先を向けたらいいのかわからぬ底なしの“絶望”“空洞”に深く打ちのめされる。『カルテット』のすずめ役もそうだったが、言動と気持ちや感情が一致しないことがままある役柄を鮮やかに演じ切る満島の確かな表現力に飲み込まれそうになる。そのちぐはぐさまで愛おしく妖しく魅力的に煌かせて見せてくれるのだから恐ろしい。満島の手にかかれば光や音まで自由自在に味方につけてしまう。

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