『カムカムエヴリバディ』半年間の熱狂と感動に感謝 100年の物語の続きは私たち自身に

『カムカム』半年間の熱狂と感動に感謝

 『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)は挑戦の朝ドラだった。

 それは、安子(白石萌音)、るい(深津絵里)、ひなた(川栄李奈)と三世代のヒロインが紡ぐ、昭和から平成、令和までの、100年のファミリーストーリーであること。前期の『おかえりモネ』からの反動もあり、序盤は物語のスピードの早さと王道の朝ドラ展開が注目されていたが、最終回まで駆け抜けた今となってみれば、それらも全て脚本を手掛ける藤本有紀の緻密かつ濃密なストーリー構成の中の一部であったことに気づかされる。

 『カムカムエヴリバディ』が革新的であったのは、日々の積み重ねを朝ドラというコンテンツの中で表現したことだ。ラジオ英語講座を毎朝聞いて英語を身につけた安子、るい、ひなたの3人、そして伴虚無蔵(松重豊)がひなたや文四郎(本郷奏多)に示し続けた「日々鍛錬し、いつ来るともわからぬ機会に備えよ」は、ドラマが描いた壮大なテーマを分かりやすく体現していた代表的なセリフである。努力をしていても思い描いた夢が叶うとは限らないが、努力をし続けなければ夢は実現しない。一度は英語習得に挫折したひなたが安子(森山良子)からアメリカ行きを誘われ、最終的にハリウッドのキャスティングディレクターになることも、ウィリアム・ローレンス改め初恋の人であるビリー(城田優)との再会を果たしたひなたが、幼い頃に話せなかった英語で「うちへ寄っていきませんか? 一緒に回転焼きを食べましょう」と誘うラストは、これから新たに始まる2人の未来を想像させるとともに、積み重ねの先にあった未来(今)を描いていた。

 半年間という終わりの決まった期間を平日のほぼ毎朝、観続ける朝ドラは、ヒロインと共に歩んでいく感覚を徐々に覚えていく。100年をともに歩んだ今、特に最終週の5日間で感じたカタルシスは、これまでの朝ドラでは味わったことのない言いようのない感慨であった。それはきっと再放送やオンデマンドを通じての視聴では感じることのできない、半年間の熱狂と感動(SNSの声などを通じて)の積み重ねがあってのものでもあるように思える。

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