“コメディアン”堺雅人を久々に堪能 SPドラマ『ダマせない男』で滅茶苦茶に

“コメディアン”堺雅人を久々に堪能

 堺雅人主演×コメディー作品という珠玉の組み合わせが久々に見られた。スペシャルドラマ『ダマせない男』(日本テレビ系)では、“超”が付くお人好しで嘘の一つも付けないサラリーマンながら、それが仇となり詐欺師に扮することになってしまう絹咲正役を堺が好演した。

 絹咲は婚活パーティーで出会った女詐欺師“フレグランス澪”こと浅香澪(門脇麦)に嵌められ、実家への挨拶に向かうも、それは真っ赤な嘘。実際にはそこにいたのは、フレグランス澪らから5億円を騙し取られた詐欺被害者で大手ゼネコン社長・貴島(生瀬勝久)であり、囚われの身の澪が、逃亡して姿を消した首謀者で詐欺師の師匠“百面のジョー”の代わりに絹咲を差し出し自分は逃してもらおうとする。

 “百面のジョー”だと勘違いされ自分に銃口が突きつけられている状況でも、ずば抜けた洞察力と周囲への気遣いばかり見せる絹咲に、貴島よりチャンスが与えられる。貴島からの命令は、絹咲と澪でタッグを組みリゾート会社社長・大森詩子(広末涼子)から1カ月の間で10億円を騙し取ること。もう滅茶苦茶だ。

 これぞ正しく堺と相性抜群の“ぶっ飛んだ、あり得ないふざけた設定”。しかし堺本人が持ち合わせている揺るがぬ“まともさ”“真面目さ”と“実直さ”が、そんな突拍子もない設定やシチュエーションを凌駕して、一気になんだかリアルに思えてくるから不思議だ。そして、そこにどこか浮世離れした空気感のある門脇麦がバディとして加わることで、絹咲と澪の対比が浮き彫りになる。澪に調教されながら彼女の手の平の上で上手く転がされながらも、想像の遥か上を行く絹咲の“とんでもないお人好し”ぶりがここぞと言う場面で発揮され、綺麗に澪の予想を裏切っていくのも痛快だ。

 寄付を募るフィッシング系の詐欺に騙され続けて700万円の借金があり、虫も植物も殺すことのできない絹咲の“正直さ”こそが彼を本物の一流詐欺師“百面のジョー”らしく見せてしまうのも面白いし、澪が言う通り彼の言動には「真っ当に生きてきた人間にしか出せない真実味、説得力」が宿り、ある意味最強の詐欺師と化してしまっている。今回の詐欺のターゲット・大森社長からもみるみる信頼を得て絶体絶命のピンチをチャンスに変え、彼女の懐にすんなりと入り込む。そしてさらに彼本人としては望んでもいない展開に気持ちの良いくらいに巻き込まれていくのだ。

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