小川紗良の眼差しがもたらした説得力 “あいまい”を肯定してくれた『湯あがりスケッチ』
穂波を演じてきた小川紗良もまた、真っ直ぐな澄んだ眼差しで世界を見る役者だ。一人の人間が気付きを得て思慮深く前に進む様子を真摯に演じる姿には、彼女だからこそ穂波に独特のしなやかさが生まれたのだという強い説得力がある。そしてまた、視聴者が寄り添い、共鳴しあえる優しいヒロイン像を描いてくれたようにも思う。
この作品の中で、穂波は一足先に道を切り開くきっかけを見つけて飛び込んだ。時に苦労しながらも、人生や生き方から逃げることなく、不安に打ちひしがれて立ち止まることなく、真摯に生きることを続けた。だが一方で、まだまだ抜け出せない存在として描かれたのが熊谷だ。彼もまた、真摯に演劇と向き合い、自身の弱さを飲み込みながらもなんとか夢を叶えようともがいてきた。そしてもちろん、その旅路は終わっていない。一見、夢叶うものと夢敗れたものの対比のようにもとれた最終話は、主題歌である羊文学の「あいまいでいいよ」という優しい歌声にのってさらに作品の深みを増す。人生は「あいまい」でいいのだ。ここが夢の終わりではないし、諦める必要もない。曖昧なまま旅路はつづく――将来も、夢も、恋も。そしてそんな曖昧なまま、日常というのは過ぎていくものなのだ。時々、銭湯の湯船の中で思い返せばいい。曖昧にしてきたことをそっと精算すればいい。温かい湯に力をもらいながら、ゆっくり進めばいいのだ。
ひかりTVでは『湯あがりスケッチ』をはじめとして、銭湯・サウナを舞台にしたドラマを多数配信中!
■放送情報
『湯あがりスケッチ』(全8話)
ひかりTVにて、毎週木曜22:00〜配信
原案:塩谷歩波『銭湯図解』
監督・脚本:中川龍太郎
出演:小川紗良、森崎ウィン、新谷ゆづみ、村上淳、伊藤万理華、安達祐実、臼田あさ美、室井滋、夏子、中田青渚、成海璃子
(c)ひかりTV
公式サイト:https://www.hikaritv.net/sp/yuagari-sketch/index.html?cid=ent_video_yuagari_sketch_of_6
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