三谷幸喜作品に欠かせない存在・梶原善 『鎌倉殿の13人』善児役の底の見えない怖さ

梶原善『鎌倉殿の13人』で底の見えない怖さ

 NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で主人公・北条義時(小栗旬)の祖父である伊東祐親(浅野和之)の下人、善児を演じる梶原善。主人から受けた命令であれば、どんな任務でも確実に、黙々と遂行する男……とはいえ、源頼朝(大泉洋)と八重(新垣結衣)の幼い息子・千鶴丸を「善児と一緒に川遊びをいたしましょう」と穏やかな表情で誘い、命を奪うというのは初登場にしてインパクトが強すぎた。

 その後も、義時の兄で頼朝を立てて坂東武者の世を作りたいと熱く夢を語り、平家打倒に心を燃やしていた北条宗時(片岡愛之助)を背後からすんなり暗殺。善児の場合、敵味方の区別なく「旦那様から固く申しつけられとるもんで。悪う思わんでください」と、追いつめられた伊東祐親から八重を殺すように命じられると、主人の愛娘にまでも無表情で斬りにかかる。そのせいで、八重を逃がそうとした江間次郎(芹澤興人)が命を落とした。あわやというときに八重は三浦義村(山本耕史)に助けられたが、どんな仕事も遂行する善児がこのまま大人しく消えるわけがない。

 梶原善は善児を演じることが発表された際に、「善児が何を思い何を考えているのか今のところわかりませんが、主から受けた命令は、必ず遂行するのだと思います」とコメント。三谷幸喜作品への出演については、『36年前、当時19歳、演技の経験のない僕に三谷さんから電話があり「次の僕がやる舞台に出てみない!』と誘われて今に至ります」と語っている(参照:梶原善、三谷幸喜との出会いを明かす 『鎌倉殿の13人』で3回目の大河ドラマ出演)。

 本作を担当する脚本家・三谷幸喜が主宰する「東京サンシャインボーイズ」に参加して初舞台を踏んだのが1985年。以降、劇団員として作品に参加し続け、1994年の舞台『東京サンシャインボーイズの罠』を最後に充電期間に入ってからもドラマや映画、舞台と活躍し、三谷作品の最常連役者として唯一無二の存在となっている。

 舞台で人気を博し、映画化もされた『12人の優しい日本人』は「東京サンシャインボーイズ」を代表する作品の一つでもあるが、梶原善は舞台でも映画でも同じ役柄で出演している。

 この、「もしも日本にもアメリカのような陪審員制度があったら?」という設定で描かれた法廷劇・密室劇・そしてコメディは、まさにチケットが取れないほど話題になり、劇団として初演が1990年、その後1991年、1992年と続けて上演され、2005年にはPARCO・プロデュース公演も行われた。梶原善が演じたのは、べらんめえ口調で気性が荒めの職人で陪審員7号。こうと決めたら他人の意見を聞かない頑固さは、同調圧力に弱かったり、安易に意見をすぐ変える人の中で個性が際立ち、印象に残る存在だった。

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