日本アカデミー賞優秀アニメーション賞5作品で振り返る、日本アニメ映画の現在地

日本アカデミー賞アニメ5作品を振り返る

『アイの歌声を聴かせて』

『アイの歌声を聴かせて』(c)吉浦康裕・BNArts/アイ歌製作委員会

 AI(人工知能)を搭載した少女型アンドロイドのシオンと、そのクラスメイトたちの友情を軸に、”AIのこころ”といったSF的テーマも絡めた青春群像劇。公開後にSNSでの口コミを介し、作品の魅力が多くの人に伝搬して上映館が増えていった作品で、インターネット上の応援からヒットへ繋がった今日的な成功例である。もちろん、それに見合う高いポテンシャルを秘めた脚本と演出が評価されて日本アカデミー賞優秀アニメーション賞へと繋がったわけだが。

 天真爛漫なポンコツAIのシオン役を演じたのは女優の土屋太鳳。アニメのアフレコや洋画吹き替えといった声の仕事は過去に何作か担当しているので、声優初挑戦ではない。本作ではシオンが突然歌い出す設定のキャラクターのため、土屋自身が多くの楽曲を自ら歌唱しているのも見どころ。

『劇場版 呪術廻戦 0』

『劇場版 呪術廻戦 0』(c)2021「劇場版 呪術廻戦 0」製作委員会 (c)芥見下々/集英社

 『週刊少年ジャンプ』連載の漫画をテレビアニメ化した『呪術廻戦』の、さらに前日譚を描く劇場版。原作者の芥見下々が『呪術廻戦』以前に発表した漫画『東京都立呪術高等専門学校』がベースになっており、時系列的には原作とそのテレビアニメ版よりも前のエピソードにあたる。原作とテレビアニメ版の予備知識がない初見の人でも観やすいことから、多くの新規ファンをも巻き込んで興行収入100億円を突破する大ヒット作になった。

 原作漫画は、人間の負の感情から生まれる呪霊という化物を祓う呪術師の戦いを描くバトルもので、劇場用アニメ『この世界の片隅に』(2016年)や、テレビアニメ『賭ケグルイ』(2017年)など、高品質な作品を世に送り出していた制作スタジオMAPPAが担当したことも成功の要因として大きい。2023年にはテレビアニメの第2期放送が予告されていて、こちらも大きな期待が寄せられている。

 第45回日本アカデミー賞の優秀アニメーション賞に選ばれた5作品は、総て異なる制作スタジオの映画で、しかも原作付きとオリジナル作品が混在しているという、なかなか良いバランスに見受けられる。アニメーションは今や立派なサブカルチャーの一角となり、「アニメは子どもだけが観るもの」という概念も既に古くなった。選出された5作品だけを見渡しても、日本のアニメ文化がいかに成熟しているかが伺える。次回のアカデミー賞に向けて、この1年間にどんな作品が公開されるのかも、目を凝らして追いかけたいものである。

■放送情報
「第45回 日本アカデミー賞授賞式」
日本テレビ系にて、3月11日(金)21:00〜22:54放送

■公開情報
『劇場版 呪術廻戦 0』
全国公開中
声の出演:緒方恵美、花澤香菜、小松未可子、内山昂輝、関智一、中村悠一、櫻井孝宏
原作:『呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校』芥見下々(集英社 ジャンプ コミックス刊)
制作:MAPPA
配給:東宝
(c)2021「劇場版 呪術廻戦 0」製作委員会 (c)芥見下々/集英社
公式サイト:jujutsukaisen-movie.jp
公式Twitter:@animejujutsu

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