『妻、小学生になる。』堤真一&石田ゆり子の“一味違う”夫婦像 幸福が残ることを信じて

堤真一&石田ゆり子の“一味違う”夫婦像

 放送中の『妻、小学生になる。』(TBS系)にて、夫婦を演じている堤真一と石田ゆり子。ベテラン二人の組み合わせには抜群の安定感があるが、この夫婦、一味違う。毎話くまなくチェックし、各回ごとに二人が互いに向け合う想いの強さに涙している人々はもちろん理解しているはずだが、堤と石田は非常に特異な夫婦像を作り上げているのだ。

 本作は、主人公・新島圭介(堤真一)の妻である貴恵(石田ゆり子)が交通事故で他界し、その10年後に小学生の白石万理華(毎田暖乃)に転生して家族の元に舞い戻ってくるというファンタジックなヒューマンドラマ。さまざまな家庭が抱えるシリアスな問題を温かなユーモアで包んで描き出している。“シリアスな問題”というのは、愛する存在を失った家族の行く末や、ネグレクトなどのこと。前者は新島一家にいえることであり、白石万理華は後者のような環境に身を置いていた。しかし、貴恵が万理華として還ってきたことで圭介と娘の麻衣(蒔田彩珠)は再起。さらに万理華が母(吉田羊)に「自分の中身は白石万理華ではなく新島貴恵なのだ」と告白し、諭したことで状況は一変した。

 等身大の小学生から、“見た目は子ども、中身は大人”な女性までを演じ分ける毎田暖乃の芸達者な一面がこの作品に血を通わせていることは言うまでもない。しかしやはり本作は、家族の物語であり、夫婦の物語だ。本来の夫婦である圭介と貴恵を演じる堤真一と石田ゆり子の好演が必要とされるのが大前提なのである。

 この二人といえば、2020年公開の映画『望み』でも夫婦を演じていたことが未だ記憶に新しい。同作は家族の物語をミステリー仕立てで描いたもので、最終的にはある種の“悲劇”を抱えて映画は終わる。あの悲劇を重厚に演じてみせた堤と石田が、いま再び夫婦役に挑んでいるというのが感慨深い。圭介と貴恵の夫婦について“一味違う”と冒頭に記しているのは、以上の経緯があるからだ。

映画『望み』舞台挨拶中継付き完成披露会

 しかも今回もまた、この夫婦は“幸せいっぱい”というわけではない。万理華の中身は貴恵だが、そこにかつての彼女の面影を見つけることができようとも、外見は貴恵に似ても似つかない小学生なのだ。だが、こんな奇妙な夫婦像を成立させているところにこそ、堤と石田の力量が見られるというもの。堤や毎田、娘役の蒔田と比べると、石田の出番は多くはない。けれども小学生の万理華の背後には、完全に“貴恵=石田ゆり子”の存在があるのが分かる。

 こう感じるのは、先述した毎田の芸達者ぶりの賜物でもあるだろうが、やはりその核となる貴恵像を石田が作り上げていてこそ。ときおり差し込まれる回想シーンでの石田のパフォーマンスによる強めの主張が、“貴恵というキャラクターの印象づけ”として功を奏しているのだ。もちろん、相手が石田であれ毎田であれ、彼女たちのアクションに対する堤のリアクションが有機的に働いていることも大きい。こうして小学生の身体を介しながらも夫婦像を成立させている点が、やはり“一味違う”のだ。

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