『王様ランキング』で克明に描かれる戦争 ボッジが手にした“誰かに愛されている”自信

 1月からフジテレビ「ノイタミナ」枠で第2クールが放送中の『王様ランキング』。ボッス王国の第一王子であるボッジ。王になることに憧れているが、短剣を操ることもできない非力な王子。さらに、耳が聞こえず、言葉も話せない。そのため、周りから蔑まれることもあった。そんなボッジだったが、暗殺集団「影の一族」の生き残りである「カゲ」と友情を育み、強くなるため旅に出る。冥府での修行を経て、ボッジはひとまわりもふたまわりも成長して帰国するが、ボッス王国は未曽有の危機にさらされており……。

克明に描く戦争

 絵本のような絵柄とはギャップのある、大人の心も刺す内容は第1クールのときから話題になっていた。耳が聞こえないボッジを揶揄する言葉、強さを称えられていたボッジの父・ボッス王は強さに固執するあまり、それが弱さとなっていたり。権力に惑わされ、人を裏切ったり……。正しく生きることがどれだけ難しく、道を間違えると元の道に戻ることがどれだけ険しいかを思い知らされる。

 しかし、第2クールではさらに問題は大きなものになっていく。ボッス王国で繰り広げられるのは「戦い」だ。『王様ランキング』のそばには常に戦いと死がある。それが第2クールでは色濃く描かれている。

「これが戦争だ」

 というセリフがあるが、理不尽に人が死んでいく。必要のない悪意を煽っていく。柔らかな絵だからこそ、残酷なシーンがより際立つ。

生きるとは ヒリングの描写から考える

 戦争の勝ち負けは生き残るか、死ぬかで決する。剣の腕が立つ者が強い。一番強いのは戦場に最後まで立ち続けた者。不老不死を手に入れれば無敵だ。

 そんな中、剣ではなく、傷を癒すという点で戦うのがボッジの義母である王妃・ヒリングだ。元僧侶の彼女は回復呪文を得意とする。その力で多くの人々を救ってきた。今回の戦いでも、その力で戦死たちを回復させる。それもただじっとしているわけではなく、自ら兵を率いていく場面も。

 人を回復させるシーンは、いかにパワーを消耗するかがよく分かる。しかし、その回復シーンはあでやかだ。回復させている最中、対象者の周りに、花が育つ。瀕死の人間が、花の息吹とともに息を吹き返す。それは血が飛び交うシーンとはあまりに対照的でいて、生きることの力強さを現しているようにも見える。

 ヒリングはポーションを飲みながら、力を使い切るまで戦士たちを癒し続ける。それでも、次々と癒しを必要とする者たちが出てくる。命はあまりに簡単に奪われる。一方で、天寿を全うすることの難しさを突き付けられているようでやるせない。

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