『おいハンサム!!』の魅力を最大限に引き上げたMEGUMI 回顧する実力派女優への道

『おいハンサム!!』で輝いたMEGUMI

 東海テレビ・フジテレビ系列の土曜深夜「土ドラ」枠で放送されている『おいハンサム!!』が、ついに最終回を迎える。吉田鋼太郎演じる父・源太郎とMEGUMI演じる母・千鶴、そしてその3人の娘たちで構成された伊藤家の日々を描いた本作。目玉焼きの焼き方から内面に個性までそれぞれ違う3姉妹が、唯一「男を見る目がない」という共通点を持ち、これを源太郎が「どうにかせねば!」と立ち上がる(?)というのが、物語の大筋だ。深夜に放送されているにもかかわらず、その3姉妹の抱えている恋愛事情の悩みはTBS火曜ドラマ枠でも大々的に取り上げるべき、普遍的でリアリティのあるものばかり。

 長女の由香(木南晴夏)は不倫に溺れたり、自分を好きという年下男子から逃げたり、試しに外見の好み抜きで付き合ってみた男にやっぱり失望したり、おひとり様化が進む恋愛迷子。次女の里香(佐久間由衣)は唯一の既婚者だったが、夫はワガママで横暴な浮気男で、しばらく悩んだ末についに離婚を決意。三女の美香(武田玲奈)は漫画家志望のヒモ男と付き合うもこじれ、エリートサラリーマンと出会いそっちに鞍替えするが実はその男がモラハラストーカー男で、彼の言いなりになってしまう。これだけ問題しか抱えていない(しかしそれらの問題がかなりの“あるある”だから、こっちはこっちで頭を抱えるしかない)3姉妹をまとめあげるのは、実は父・源太郎(吉田鋼太郎)ではなく、母・千鶴(MEGUMI)だ。

 このドラマの魅力は先に述べた現代の20代から30代の女性に降りかかるあらゆる恋愛の落とし穴を描き切ることだけでなく、その先にある母・千鶴の金言や所作だったりする。いつも心を傷だらけにして実家に戻ってくる娘たちに、深い事情は聞かずに「ご飯食べる?」とあえて放ったり、父が気合を入れて良いことを言うのに対し、さりげない感じでボソッと深いことを言ったり。伊藤家も、ドラマ自体も締めている存在はMEGUMIなのだ。

 MEGUMIといえば、世代によって印象が違うかもしれない。1999年に芸能デビューを果たし、グラビアアイドルとして活動。2000年代は特にバラエティ番組での活躍が目立ち、人気を博した。この頃の印象が強い人にとっては、女優としての彼女がこんなにも地に足のついた、素晴らしい演技をすることに少しギャップを抱くこともあるかもしれない。しかし、彼女は2004年からすでに女優活動をしていて、立派なキャリアがあるのだ。特に2009年に一児の母となってからは、ドラマや舞台を中心に精力的に活動していた。自らマネージャーに「女優業にシフトしたい」と話していたことを、第62回ブルーリボン賞受賞式にて語っている。それでも、彼女はそんなバラエティ時代の20代と出産後の30代前半を、女性誌『Voce』のインタビューにて「暗黒時代」と振り返っていた。結婚や出産を経て急に母親になったことへの戸惑い、それと同時に30代に入ってから役がこない、ドラマや映画のオファーがないことへの悩みを抱えていたと同インタビューで語っている。

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