吉田鋼太郎は日本のケネス・ブラナー 魅力が存分に発揮された『おいハンサム!!』の面白さ

吉田鋼太郎は日本のケネス・ブラナー?

 東海テレビ・フジテレビ系列の土曜深夜「土ドラ」枠で放送されている『おいハンサム!!』が想像以上の面白さだったことが、この1月期の民放連続ドラマで一番の収穫である。

 伊藤理佐の漫画作品を何作品か掛け合わせて作られた、ほとんどオリジナルストーリーで展開する本作は、昭和気質な頑固オヤジと、しょうもない男にしか縁がない3人の娘たち、そしてもはや悟りの境地に達している母の5人家族・伊藤家のちょっぴり波瀾万丈な日常を描いた古風なホームコメディである。

 ストーリーテリングのひとつの軸になっているのは、家族それぞれの目玉焼きの焼き方へのこだわりをはじめ、絶対に使いきれずに残ってしまう長ネギや“冷蔵庫地図”といった“食”に関する価値観。それがこのドラマで描かれる物語が人間の基本的な生活行動に根ざしたものであることを表し、日常性をより一層高めていく。それでいて「間違いのない選択なんてない」(第1話)や「自分のために貝を買いなさい」(第2話)といった、時に直球で時に変化球も繰り出すメッセージ性も会話の中にさりげなく組み込むことで拗さを感じさせない。

 そして伊藤家の家屋が放つ圧倒的な昭和の空気感と、面倒臭いけれどどこか憎めない典型的な“昭和のオヤジ”でありつづける吉田鋼太郎の相性の良さ。“令和”である外の世界で繰り広げられるさまざまな出来事が、娘たちによって“昭和”である家の中に持ち込まれていくことで発生する時空のズレにも近い化学反応がなんとも小気味良く、吉田演じる父・源太郎がゴルフクラブ片手に外に出ても、令和においてそれは大胆に機能することがないという哀愁の表現。古臭いというネガティブさを感じさせることなく笑いを生むのは、彼らキャスト全員が同じ波長でコメディ演技を繰り広げているからに他ならず、その大黒柱にして昭和の残党たる源太郎のキャラクター性によって成立しているといっても過言ではない。

 そんな吉田鋼太郎といえば、舞台俳優として実績を積み、『半沢直樹』(TBS系)やNHK連続テレビ小説『花子とアン』によってお茶の間にその名が知れ渡ったのはもう50代になってからのことだ。いわゆる遅咲きのブレイク俳優であり、近年では『今日から俺は!!』(日本テレビ系)での賀来賢人演じる三橋の父であったり、映画『帝一の國』での菅田将暉演じる赤場帝一の父であたり、はたまた『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)での柳楽優弥演じるまりぶの父でレンタルおじさんでもあったりと、コミカルな父親役というのがよく目立つ。今回の『おいハンサム!!』もその延長線上にある役どころといえようか。

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