どんな出逢いも肯定してくれる『ちょっと思い出しただけ』 映画だからこそ表現できた6年間

松居監督最高傑作『ちょっと思い出しただけ』

 2人で笑いあいながら言い合ったあの言葉も、何気ないやり取りも、まったく同じことを繰り返しても、環境も時代も変われば、別の形で受け取られてしまうものになる。時間を遡っていくからこそ、照⽣と葉がどこにすれ違いのきっかけがあったのかが明確に分かります。それを発見してしまうことに映画を観る面白さと切なさがありました。

 時間は遡っていく一方、映画としてのクライマックスは右肩上がりで最後に極上のダンスシーンがやってきます。少し恥ずかしい言葉ですが、「出会えたことが奇蹟」と思わずにはいられない本当に特別なシーンです。ひとつひとつの細かい記憶は徐々に薄れていったとしても、「想い」は必ず身体に刻まれる。そして、“ちょっと思い出した”ときにそれが何かの救いになる。誰かと出会い別れたとしても、その経験が自分にとっても相手にとっても、絶対に無駄なものにはならないこと。すべての人の人生を肯定してくれるようなメッセージが込められているように思いました。

 池松壮亮、伊藤沙莉の2人の名演はもちろんながら、“妖精”の尾崎世界観、“時空の旅人”のような永瀬正敏など、役者陣はみんな適材適所です。個人的には松居大悟監督の最高傑作だと感じています。一度目よりも二度目の方が楽しめたので、映画館で「二回」観ることをオススメします!

■公開情報
『ちょっと思い出しただけ』
全国公開中
監督・脚本:松居大悟
出演:池松壮亮、伊藤沙莉、河合優実、尾崎世界観、國村隼、永瀬正敏
主題歌:クリープハイプ「ナイトオンザプラネット」(ユニバーサル シグマ)
制作・配給:東京テアトル
制作プロダクション:レスパスフィルム 
製作:『ちょっと思い出しただけ』製作委員会(東京テアトル ユニバーサル ミュージック)
2021年/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/115分
(c)2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会
公式サイト:choiomo.com
公式Twitter:@choiomo_movie
公式Instagram:@choiomo_movie

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