『脱出おひとり島』は恋愛リアリティ番組として観やすい? ヒットまでの潮流を考える

 こういった「リアリティショー」に準ずるバラエティ番組の見どころは、もちろん各々の恋愛ドラマの行方やキャスト自身の魅力であるものの、『脱出おひとり島』はそれだけではない。そこに加えて圧倒的な“観やすさ”がある。そしてその正体は、番組内で展開されるスタジオトークだ。

 スタジオメンバーは『検索ワードを入力してください:WWW』などでも知られる人気女優イ・ダヒ、音楽グループ「PHANTOM」の元メンバー・ハネ、キムチを展開する会社のCEOを務めるなど実業家としても活躍しつつ、コメディアン、女優としても知られるホン・ジンギョン、アイドルグループ「SUPER JUNIOR」のメンバーであるキュヒョンで構成されている。彼らは主にショーを観進めながらキャスト陣にコメントをしていくという意味で、他の恋愛リアリティショーと比べて特別なことをしているわけではない。しかし、その物言いやコメント自体にすごく「不快感がない」のは確かである。まず、もともと韓国語の特徴として初対面の人や目上の人には敬語を使うため、スタジオ陣はキャストに対して常に丁寧語で話す。そしてコメントそのものが「〜さんは努力している」、「〜さんはこういうふうに考えているのかもしれないですね」と、ポジティブに良い面を評価したり、VTRの内容を見ながら各々がちゃんと考察をした実のあるものであることが多いのだ。

 例えばアメリカの番組の場合、韓国と言語的特徴も異なるので相対的にくだけた表現が多かったり、キャストをダジャレ的な掛け言葉でいじったり、対立を冷やかし煽るものが多い印象だ。同じアジアとして日本の番組を見ても、少し前に作られたものには少しマイナス部分にフォーカスし、いじりコメントに寄りがちな傾向にある気がする。ただ、2021年の『バチェラー・ジャパン シーズン4』ではあえてお互いを戦わせるようなコメントをするわけでもなく、女性出演者へのポジティブなコメントが目立った印象があるのは事実だ。

 「恋愛リアリティショー」の人気の背後には、出演者のメンタルヘルスにまつわる深刻な問題がある。無闇なコメントを受け、“ヒール役”にされてしまったキャストがネット上で誹謗中傷を受けることも多く、自殺者の数も決して少なくはない。スタジオや制作側も演出で煽れば煽るほど“盛り上がる”と、番組が人気になると思ってやっている節があるが、『脱出おひとり島』のヒットにより、決してそうしなくても良いことに気づいてほしい。こういったスタジオトークの雰囲気の変化や、キャストへの真摯な態度と本質的なコメントこそが、この分野に大きな変化をもたらすということに。

■配信情報
Netflixオリジナルシリーズ『脱出おひとり島』
Netflixにて独占配信中

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