『フレンチ・ディスパッチ』リナ・クードリに聞く、ウェス・アンダーソン作品の稀有な体験
ウェス・アンダーソン監督最新作『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』が1月28日に公開を迎えた。20世紀フランスの架空の街にある「フレンチ・ディスパッチ」誌の編集部を舞台に、3つの物語が展開される本作。ビル・マーレイ、ティルダ・スウィントン、オーウェン・ウィルソンらウェス・アンダーソン作品の常連俳優に加え、ベニチオ・デル・トロ、ティモシー・シャラメ、エリザベス・モスらアンダーソン監督作品初参加のキャストも多数登場する。そんな初参加組の1人で、シャラメとともに第2話「宣言書の改訂」にメインで登場するのがリナ・クードリ。2020年に日本公開された『パピチャ 未来へのランウェイ』で主演を務め、今後も『GAGARINE/ガガーリン』、『オートクチュール』の公開が控えている注目株だ。そんな彼女にリモートインタビューを行い、ウェス・アンダーソンとの初タッグやティモシー・シャラメの意外な素顔について話を聞いた。
「ウェスは、自分の世界に私たちを連れて行ってくれる」
ーーまず、どういう経緯でこの作品に出演することになったのかを教えてください。
リナ・クードリ(以下、クードリ):「実はすごい経緯があって……」と言いたいところですが(笑)、正直に言うと経緯はとてもシンプルで、単にオーディションを受けて受かっただけなんです。二度目のオーディションの後に電話があり、「監督があなたに出演者のひとりとして参加してほしいと言っています」と告げられて、参加させていただくことになりました。
ーーウェス・アンダーソンの作品にはどういう印象を抱いていましたか?
クードリ:ウェス・アンダーソン監督の作品は大好きでした。実は、一番最初に電話で「ウェス・アンダーソンの次回作のオーディションがパリであります」と言われたのですが、勝算はないなと思っていたので「わかりました。とりあえずオーディションは受けてみます」とだけ答えました。でも、ウェスの作品が大好きだったので、オーディションを受けること自体にはすごくエキサイティングでした。私のお気に入りは『ムーンライズ・キングダム』で、彼の作品も、その世界観も大・大・大好きなんです。一緒に仕事をした今では、人間としての彼も大好きになりました。本当に彼の大ファンだったんです。
ーーあなたにとっても念願の出演だったわけですね。実際にウェス・アンダーソンと一緒に仕事をしてどうでしたか?
クードリ:ウェスはすべてがユニークで、彼の現場もすべてが独特なんです。キャストもスタッフも同じホテルに泊まり、夕食もみんなで一緒に食べる。まるで家族のようですね。彼は、ひとつのコミュニティーでみんなが同じものを体験しているという実感を必要とするような監督。それが、クリエイションの手助けになるのだと思いますし、どっぷりと作品世界に浸ることを可能にするのだと思います。今回撮影を行ったフランスのポワトゥー・シャラント地方の町アングレームには、この地方ならではの伝統的な室内履き、シャランテーズ(シャラント・スリッパ)があるのですが、ウェスは全員にそのシャランテーズをプレゼントしたんです。その結果、同じホテルでみんな同じスリッパでうろうろすることになって、まるで家にいるような感覚になりました(笑)。シャランテーズは映画にも出てくるので、ぜひ注目して観てください。
ーー噂通り、独特な方なんですね(笑)。
クードリ:そう、何から何まで独特なんです。カンヌ国際映画祭への移動も、カンヌ史上初めてバスで乗り込みました。ウェス本人のもので、彼の好みで赤や黄色などカラフルに装飾されたバスでとても注目を浴びました。本当にユニークな人で、彼がやることは全てが細部まで熟考されているんですよね。そんな彼の作品に参加できたのはすごい体験でした。ウェスは、自分の世界に私たちを連れて行ってくれるんです。
ーー今回の作品にもビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソン、ティルダ・スイントン、エイドリアン・ブロディらが出演していますが、ウェス・アンダーソンの作品には彼らのような“常連俳優”がいるので、今後また彼の作品にあなたが出演することもあり得そうですね。
クードリ:そうであると嬉しいですね。今回のような体験を味わい、こういう作品に出演した後では、誰だって彼ともう一度組みたいと思うはず。撮影はとてもうまくいったので、彼からオファーがあれば、もちろん「ウィ」と躊躇なく快諾します!