朝ドラファンは気づく? 料理監修がつなぐ『おむすび』『ごちそうさん』のスコッチエッグ

朝ドラファンなら気づく“スコッチエッグ”

 NHK連続テレビ小説『おむすび』が現在放送中。平成元年生まれの主人公・米田結(橋本環奈)が、どんなときでも自分らしさを大切にする“ギャル魂”を胸に、栄養士として人の心と未来を結んでいく“平成青春グラフィティ”。

 第12週では星河電器の社員食堂で働き始めた結の前に、三宅弘城演じるベテラン調理師・立川周作が立ちはだかる。“翔也(佐野勇斗)の彼女”として対峙した際にニコニコ笑顔を見せていた立川はどこへやら、初出勤した結を「うちに栄養士なんかいらん!」と邪魔者扱いするのだった。

 女性社員や野球部員のことを考え、ヘルシーなメニューを提案する結を立川は一蹴。健康志向が高まった現在において、結の意見はもっともだと感じるが、ドラマの舞台は2009年。実はこの年の4月にタニタの社員食堂がテレビで初放送され、翌年にはレシピ本が大ヒット。これによって社員食堂の在り方に大きな変化が起こるため、劇中ではまさにその端境期が描かれている。

 『おむすび』制作統括の宇佐川隆史は「このドラマは、平成のターニングポイントを描いています。今回は「社員食堂編」ということで、描いているのはカロリーバランスやヘルシーさよりも、安さや量、サービスが重視されていた時代。すなわち、社員食堂の夜明け前なんです」とし、「“社会人1年目の奮闘”という王道のテーマもありますが、立川が幅を利かせているという世代間ギャップや、食堂業界の変わり目である2010年前後にどんなことが繰り広げられていたのかを、結や原口(萩原利久)の目線で追っていく週でもあります」と語る。

 社員食堂を描くにあたり、宇佐川はNHK局内の社食事情のほか、社会人野球をはじめとするスポーツ団体、スポーツチームを持つ企業、さらには一般企業の食堂にも取材を実施。「立川は調理師かつリーダーですが、当時の社員食堂ではとにかく調理師ファースト、調理師主導のところが多かったそうです。もちろん、セリフは立川のキャラクターに沿ったものですが、考証の先生方からも『あるある』だとおっしゃっていただきました」と、立川の人物造形にはリアリティがあると明かす。

「立川の仕事観としては、自分が社員食堂を支えるんだと責任を持っている。だからこそ最後まで自分にやらせてほしいし、他には任せられないと。それが立川の正義だと思いますが、体重計などを製造する精密機器メーカーの社員食堂が出した本がベストセラーとなり、社食が注目されたことをきっかけに、管理栄養士や栄養士が積極的に、体調管理を考えたメニュー開発を行うようになっていく。そういった流れを結や原口に託し、立川には安くて美味しい料理をたくさん食べてほしいという、かつての社食の思いを託したかたちです」

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