三谷幸喜3作目の大河ドラマ 小栗旬主演『鎌倉殿の13人』5つの見どころ

『鎌倉殿の13人』5つの見どころ

3)“本当は怖い!”英雄談 大泉洋演じる源頼朝は非情の人か

鎌倉殿の13人

 源氏のプリンスであり、武家政権をスタートアップしたアントレプレナーである頼朝だが、結果的に義経ら血を分けた弟たちにしたことを見れば、非情の人である。頼朝役の大泉洋は三谷が監督した映画『清州会議』では豊臣秀吉を演じており、その秀吉も主君・信長の息子たちや格上の大名たちを騙し出し抜いてのし上がる冷徹さを持っていた。秀吉は天下を取りたいという野望だけではなく、戦のない世を築きたいという理想を抱いているからこそ、手段を選ばず周囲の人を切り捨てるのだが、そこは本作の頼朝に共通するところかもしれない。

 そして、今回は頼朝と義経(菅田将暉)の関係がどう描かれるのかも気になる。歴代の大河ドラマでも、頼朝が義経を邪魔者として追い詰めるパターン(『平清盛』など)と、本当は義経のことがかわいいけれど大人の事情でやむなく……というパターン(『義経』など)に分かれる。ちなみに、三谷による演劇作品『日本の歴史』(2018年初演)では、頼朝(中井貴一)と義経(香取慎吾)が歌に乗せてお互いの心情を語り合い、義経は兄に向かってどうしてわかってくれないのかと嘆き、頼朝は弟を愛しているものの政権安定のため処罰せざるをえないのだと涙ながらに訴えていた。

4)三谷組のキャストと初参加の俳優による共演

鎌倉殿の13人

 ドラマ公式ガイドブックのインタビューによると、三谷から直々にオファーされた出演者が多く、三谷はキャスティング・ディレクターも兼ねた立場になっているようだ。『真田丸』からは三谷が絶大な信頼を寄せる大泉洋をはじめ、片岡愛之助、山本耕史、鈴木京香、草笛光子、迫田孝也、中川大志らが引き続き出演。宮澤エマ、秋元才加、新納慎也ら舞台『日本の歴史』の出演者も。さらに三谷が書いた歌舞伎『月光露針路日本 風雲児たち』からは坂東彌十郎、市川猿之助、市川染五郎、八嶋智人がジョイン。ちなみに小池栄子は三谷組にすっかり馴染んでいるが、三谷とは2019年の映画『記憶にございません!』で初めて組んだ新しめのメンバーだ。今回が三谷作品初参加となる新垣結衣、江口のりこ、松平健、小泉孝太郎にも注目だ。彌十郎は『真田丸』で真田昌幸を演じた草刈正雄のようなポジション。従来の豪放な時政像とは違って、ごく平凡な田舎侍だが雑草のようにタフな時政を軽妙に演じている。その息子役の片岡もドラマではクセの強い役が多いが、今回は一本気で熱しやすい青年・宗時役で、ストレートな演技だけに上手さが際立っている。そして、梨園きっての美少年である市川染五郎のテレビでの初の大役にも注目したい。

5)歴史の敗者ではなく勝者という新しい挑戦

鎌倉殿の13人

 『新選組!』の近藤勇(香取慎吾)は官軍に捉えられて斬首され、『真田丸』の真田信繁は大坂夏の陣で家康に破れ力尽きた。政権が交代するとき、負け組となってしまった“敗者”の物語を描いてきた三谷だが、本作では初めて北条義時という歴史の勝者を描く。ただ、鎌倉幕府は平家の滅亡と源氏の骨肉の争いと武士の抗争など、多くの血を流した末に築かれた政権。田舎の武家だった北条氏が成り上がって実質的に天下を取ったぞ!という痛快な描き方にはならないのではないか。三谷は喜劇作家というイメージが強いが、ナチスの高官たちを主人公にした演劇作品の『国民の映画』などでも、時代の渦の中で超えてはならないラインを超えてしまった人物をシリアスに描いてきた。この大河ドラマでも後半はゾクゾクとするような鋭い歴史観を見せてくれることを期待したい。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、1月9日(日)スタート 毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、1月9日(日)スタート 毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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