緒方恵美、『呪術廻戦 0』乙骨憂太役で新たな境地へ 清々しさすら感じた狂気の名シーン

緒方恵美、乙骨憂太役で新たな境地へ

随所に光る、声優シーンを支えるベテランの技

劇場版 呪術廻戦 0

 真希は、乙骨を奮起させる導火線のような存在を果たした。最初は受け身だった乙骨の態度に苛立ちを感じるが、乙骨が自ら戦うことを決め鍛錬に打ち込む姿に、自らの過去を打ち明けるまでに心を開く。真希と乙骨のやりとりはどこかキュンとする部分もあり、真希を姉のように慕う乙骨を演じる緒方の声の演技は、真希への信頼や守りたい存在に対する包容力に満ち溢れていた。

 しかし夏油の前に倒れた真希を見た瞬間の、乙骨の感情はすさまじい怒りに変わっていく。「殺す殺す」と連呼するシーンは、碇シンジのような自分に言い聞かせるネガティブなものとは違い、自らの意思として確かな殺意が感じられるもので、緒方の演技からも狂気がみなぎっていた。また、夏油を倒すためにすべてを受け入れる姿はどこか達観している感じもあり、狂気も度を越すとここまで清々しくなるのかと思わせた。

 里香を演じた花澤香菜の演技もすさまじい。特級過呪怨霊となった里香は、見た目も恐ろしい化け物だが、その根底には乙骨を一途に愛する乙女心が残っている。花澤が発する里香のうめき声を交えた「憂太~大好き~」と発する声の演技は、恐ろしさの中に乙女心が入り交じり不思議と可愛く見えたほど。最後に、乙骨のすべての感情が後悔と懺悔の気持ちに振り切られたシーンでは、それを優しく包み込むような本来の里香の声は、まるで聖母のような温かさだ。

 約2時間という短い時間の中で、乙骨の様々な感情を演じた緒方。激しくスピーディーな戦闘シーンの中で成長し覚醒していく様子は、秒単位で心が変化していく。乙骨憂太というキャラクターを保持しながら、まるでページをめくるように感情を変化させていく緒方の演技はまさしくベテランの技だ。

 可愛らしい祈本里香と特級過呪怨霊の祈本里香という、極端な二面性を振り切った演技で見事に演じた花澤香菜の技量も、これまで数多くの役柄を演じてきた花澤だからこそだと言える。ほかにも、小松未可子(禪院真希役)、内山昂輝(狗巻棘役)、関智一(パンダ役)、中村悠一(五条悟役)、櫻井孝宏(夏油傑役)といった、TVアニメ『呪術廻戦』でもお馴染みの実力者がずらり。緒方、花澤をはじめ、声優シーンを支えるキャスト陣の“声技”が、『劇場版 呪術廻戦0』を、ドラマを越えたドラマに引き上げていると言える。

■公開情報
『劇場版 呪術廻戦 0』
全国公開中
声の出演:緒方恵美、花澤香菜、小松未可子、内山昂輝、関智一、中村悠一、櫻井孝宏
原作:『呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校』芥見下々(集英社 ジャンプ コミックス刊)
制作:MAPPA
配給:東宝
(c)2021「劇場版 呪術廻戦 0」製作委員会 (c)芥見下々/集英社
公式サイト:jujutsukaisen-movie.jp
公式Twitter:@animejujutsu

■配信情報
TVアニメ『呪術廻戦』
各動画配信サービスにて配信中
声の出演:榎木淳弥、内田雄馬、瀬戸麻沙美、小松未可子、内山昂輝、関智一、津田健次郎、岩田光央、遠藤綾、黒田崇矢、中村悠一、木村昴、井上麻里奈、赤崎千夏、麦人、山谷祥生、櫻井孝宏、千葉繁、田中敦子、島崎信長、諏訪部順一
原作:芥見下々(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:朴性厚
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史
制作:MAPPA
第2クールオープニングテーマ:Who-ya Extended「VIVID VICE」(SMEレコーズ)
第2クールエンディングテーマ:Co shu Nie「give it back」(ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)
(c)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員
公式サイト:jujutsukaisen.jp
公式Twitter:@animejujutsu

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる