味方良介、『教場』以降の2022年もさらに飛躍? エンタメ界における重要性
『ドリームチーム』(NHK総合)や『理想のオトコ』(テレビ東京系)などの連ドラにレギュラー出演し、『刑事7人』(テレビ朝日系)や『相棒』(テレビ朝日系)といった人気シリーズものにゲストとして登場。Amazon Originalドラマ『ホットママ』にまで活躍の場を広げた。もちろん、演劇での味方の躍動ぶりは言わずもがな。これまでずっと演劇のフィールドで芸を磨き上げてきたとあって、やはり味方の“真価”を堪能するならば舞台だと個人的には思う。
今年はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』もあったが、演劇ファンにとって非常に重要な作品となったのが『熱海殺人事件 ラストレジェンド 〜旋律のダブルスタンバイ〜』なのではないだろうか。味方良介といえば、『熱海殺人事件』。彼が同作の主人公・木村伝兵衛を演じるのはこれが4度目のことで、しかも本公演は、多くの演劇人がこの演目に挑んできたメッカ・紀伊國屋ホールの改修前の最終公演。これがどれだけ名誉なことか。この機会に味方が舞台に立つことに、演劇界の彼に対する期待度の高さがうかがえるというものだ。
本作のお決まりである「白鳥の湖」が爆音で流れる中で緞帳が上がり、舞台上でがなり立てる味方良介=木村伝兵衛を目にした瞬間、思わず涙が溢れた。日本全国で上演され続ける作品の“お決まり”のシーンとあって、正直ここで勝敗が決まりそうにも思う。味方による4度目の木村伝兵衛は間違いなかった! 彼の見事な体幹から繰り出される動きの一つひとつは風をも巻き起こすようであり、野太い声は客席後方にまで鋭く突き刺さる。物語や演出に対してだけでなく、彼の演じる姿そのものに涙してしまったのは筆者だけではないはずだ。
そんな味方は、二兎社による新作『鴎外の怪談』で舞台に立っているところだ(諸事情により現在は中断中。公式サイトを参照されたい)。劇作家・永井愛の代表作の一つである本作の物語は、文学者にして官僚という社会的な立場にある森鴎外と周囲の者たちと、「大逆事件」の関係を描いたもの。味方は永井荷風に扮している。先輩俳優たちとのストレートプレイに興じる姿は、ミュージカル作品や、つかこうへい作品のときとはまた違う彼の一面が垣間見えて頼もしいし、基礎力の高さが明らかになっていると思う。白眉なのがクライマックスでの演技。鴎外らは社会の動きに抗えず、荷風はすっかり変わってしまう。言葉は江戸っ子調に変わり、江戸文化の探求に身を捧げることを誓うのだ。シーンとしてはおかしみのあるものだが、この急変ぶりこそが、社会の動きに抗えなかった“哀しみ”を体現していたように思う。
本作は2022年より上演の再開が見込まれているため、多くの方に目撃していただきたいものである。本作に続いて、来年の味方はどのような存在になっていくのだろうか。朝ドラや大河ドラマなどの国民的ドラマに出演すれば、映像のフィールドでも一気にトップに躍り出ること必至だろう。映画出演も期待。そして何より2022年も、味方良介が座長の『熱海殺人事件』が観たいものだ!
※『鴎外の怪談』の「鴎」は正式には旧字体。