『劇場版 呪術廻戦 0』に期待したいこと 五条と夏油の因縁はより深く描かれるのか?

『劇場版 呪術廻戦 0』に期待すること

 また、アニメーション描写として楽しみなのが、夏油が東京・新宿と京都に千の呪霊を放って人間を皆殺しにしようと目論む「百鬼夜行」を阻止するために、日本中の呪術師が迎え撃つ総力戦をどう描くか、である。まともに描くと手間がかかる大変な場面なので、漫画では断片的にしか描かれていなかったが、予告編を見る限り、期待できそうだ。テレビアニメであれだけ激しいアクションを描いたMAPPAなら、ド派手な見せ場に仕上げてくれるはず。 

 『呪術廻戦』を読んでいると、過酷な週刊連載の中で芥見が漫画家として急成長しているのがわかる。だからこそ、序盤に描かれた話は見劣りしてしまうのだが、MAPPAのスタッフは芥見の意見を取り入れることで、ある種のセルフリメイクをおこなっており、だからこそアニメ版は高いクオリティに仕上がっていた。

 おそらく『0』も同様のアプローチが取られているはずで、単純な映像化とは違う2021年ならではの作品になるのではないだろうか。

 最後に、漫画にはないアニメ独自の魅力は、やはり声優の声ではないかと思う。アニメ版『呪術廻戦』はもともと声優陣が豪華だったが、『0』で乙骨の声を緒方恵美が担当すると知った時は「そう来たか!」と興奮した。予告編で乙骨が発した繊細な声を聞いて、緒方が声を担当した『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、『エヴァ』)の碇シンジを思い出した方も多かったのではないかと思う。

 確かに乙骨の弱々しい姿は、碇シンジとどこか重なる部分がある。だが同時に筆者が連想したのは、同じ緒方が声を担当した『幽☆遊☆白書』(以下、『幽白』)の蔵馬で、なるほど『0』は乙骨が「碇シンジから蔵馬に変わる話になるのか」と思った。 

 『呪術廻戦 公式ファンブック』(集英社)の中で芥見は『エヴァ』を監督した庵野秀明と『幽白』や『HUNTER×HUNTER』の作者として知られる漫画家・冨樫義博の作風に強い影響を受けていると語っている。確かに『呪術廻戦』のキャラクターやストーリーはもちろんのこと、心情の揺れが荒々しい作画となって表現される芥見の作風を見ていると、かつて庵野や冨樫が持っていた先鋭性を継承しているように感じる。

 『0』は緒方恵美を起用したことで、ある意味『エヴァ』(庵野秀明)と『幽白』(冨樫義博)の遺伝子をも引き継いだ作品になっているかもしれない。

■公開情報
『劇場版 呪術廻戦 0』
12月24日(金)公開
声の出演:緒方恵美、花澤香菜、小松未可子、内山昂輝、関智一、中村悠一、櫻井孝宏
原作:『呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校』芥見下々(集英社 ジャンプ コミックス刊)
制作:MAPPA
配給:東宝
(c)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:jujutsukaisen-movie.jp
公式Twitter:@animejujutsu

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