麦倉正樹の「2021年 年間ベストドラマTOP10」 ますます問われる地上波ドラマの存在意義

 キャストの豪華さと美術をはじめとするクオリティの高さで毎年楽しみにしつつ、上位に選出することも多い大河ドラマだけれど、『青天を衝け』に関しては……あまり馴染みがないけれど、その功績は多くの人の認めるところであり、新札の肖像となることも決定している「渋沢栄一」の生涯を描いた作品であることはともかくとして、いわゆる幕末から明治にかけての歴史を、従来とは異なる角度から描いた点は評価しつつも(草なぎ剛の徳川慶喜は、とても良かった)、栄一が実業家となって以降の物語については、少々平板というか、加齢による重さや深さの欠如という意味でも、やはり少し難しいところがあったのではないだろうか。

『青天を衝け』(写真提供=NHK)

 7位以降の作品は、奇しくもすべて漫画が原作の作品となったけれど、『サ道』と『孤独のグルメ』については、もはや漫画が原作云々ではなく、その舞台設定が「コロナ以降」であることも含めて、この2つのドラマが、我々の日常と並走するドラマであることを改めて再確認させてくれるような作品になっていた。どっこいそれでもみんな生きているのだ。マスク姿で美味い飯屋を探し、ときにはサウナで「整い」ながら。『消えた初恋』は、道枝駿佑と目黒蓮、そして福本莉子というフレッシュなメインキャストの魅力が、物語そのものが持つテーマ以上に強く印象に残った。『婚姻届に判を捺しただけですが』は、多くの人がハマっていたように見受けられる『最愛』(TBS系)も含めて、個人的にいまひとつ入り込んで観るような作品が少なかった秋冬クールにあって、そこそこ既視感のある話ではあるけれど、結局いちばん楽しく観ていたのは、この作品だったのかな……というか、この手の役柄(『おかえりモネ』の「菅波先生」とも、ちょっと共通するような)を嫌味なく演じることができるのは、今の時代、やはり坂口健太郎しか考えられないな……という意味で、最後に選出した。

■リリース情報
『大豆田とわ子と3人の元夫』
Blu-ray&DVD BOX好評発売中
発売元:カンテレ
販売元:TCエンタテインメント
(c)カンテレ

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